子育てが今いる環境を俯瞰させてくれる 小島聖×山瀬まゆみ
ことなるわたしたち
昨年から、『月曜、朝のさかだち』と『ことなるわたしたち』では、3か月ごとに共通のテーマで記事を紡ぐ特集企画になりました。今回のテーマは、「わたしと『休息』の設計図」。一児の母でもある女優、小島聖さんにとっての自分なりの休み方とは? 同じく一児の母になったファシリテーター山瀬まゆみが子育てと仕事のバランス、その中で派生する子どもと一緒に生活をすることへのリアルな心境を聞きました。
親の考え、子どもの考え。成長していくにつれ、すり合わせが大変になる。
山瀬まゆみ(以下、山瀬)_東京に拠点を置きながら、長野に別宅もあると聞きました。そういう二拠点生活を羨ましいな、とも最近よく思うんです。聖さんのライフスタイルを考えると、長野に拠点を振り切ってみても? という気持ちがあるんじゃないかと思って。考えてらっしゃいますか?
小島聖(以下、小島)_自然も好きですけど、都市にあるものも同じくらい好きなんです。ファッション、美術、演劇、そういう文化的なものにすぐ触れられるのは、東京が一番手っ取り早いと思っていて。それと、東京という都市生活らしい不干渉というか、そういう環境に居心地の良さもある。むしろ私みたいな内向的なタイプが田舎にポンって行ったら、地域によっては疲れちゃうかもしれないし。そう思うと、思い切って振り切ってみた方がいいんだろうと思う反面、不安も拭いきれず、その1歩が踏み出せずに東京にいる、今はそんな感じなんです。
山瀬 _私は2年前に子どもを産んで、最近、教育移住じゃないですけど、東京ではない場所、地方にかなり興味を持つようになっているんです。東京で子どもを育てるって聖さんにとって、どういう感じなんですかね?
小島_知り合いが、長野に移住して公立の学校に通わせているんですけど、その方の話だと、タブレットを使って大方の授業カリキュラムは都市とも変わらないと。でも、生活の授業がとても豊かだそうで、その地域では昔から相撲が盛んで、学校に土俵があり、年に1回相撲大会をやったり、当たり前のようにお米を育てたり、畑をやったり。そういう環境は私にとっては魅力的に見えています。
山瀬_ それはいいですね。
小島_私が今都内で住んでいる地域では、小学校低学年から塾に通うお子さんが多くて。通わせている学校では100パーセント近くの生徒が中学受験をするという噂です。公立なのに、進学率が高いということで地域からも定評のある小学校みたいで。私にとってはそれが逆にプレッシャーな部分もあります。なぜならそれは学校の環境が良いから進学率が高いのではなく、みんなが塾に行っているからじゃないですか。穿った目で見ると、学校より塾に任せているように見えてしまう。学校では宿題という言葉を使わず、自主学習をしてくださいと。その理由として“自主性を大事に”と言われました。自主性は素晴らしいし大切ですが低学年にとって、かなり自立している子じゃない限り、課題がなければ、自ら勉強をすることって難しいと思うんです。親の責任も問われます。
山瀬_ そうすると、結局、塾に入れる選択肢しか残らなくなりますね。うちはまだ2歳なので、先の話かなと思っていたんですけど、最近、4歳になるお子さんがいる友達がめちゃめちゃ受験ママをやってるんですよ。4歳から受験の準備って早すぎるような気もするし、でもどこかで子どもの環境っていうのは親が決めていかなければいけない。みんなはどうやって決めてるのか、自分もそんな先の話じゃないのかもって思っていて。
小島_小学校受験は、受かったとか落ちたとか、あんまり本人が気にしない年齢だから、その間に行った方が子どもにとっていい、という考え方もありますよね。受験はどこかのタイミングでは経験する、それが早いか遅いかの差とも聞きます。でも、私が小学校や中学校の時は、こんなにみんなが塾に行ってはいなかった。今の住んでいる地域の子どもたちが特別なのか、どこでもこんな感じなのか。時代なのか。答えは見つかりません。
山瀬_ 私は東京出身で、私の学生時代でも受験をするような子は小学校から塾にすごい通っていた印象ですね。それを思うと、東京は一元的で、なんか選択肢があんまりないような気もしてきました。親としても、たまたまそのエリアに住んだから、そういう環境にさせているという感じなんじゃないかと。つまり、教育移住者とは真逆の考え方というか。うちの親もまさに、そんな教育のことまで考えて地域を選んだわけではないと思います。
小島_ある程度大きくなってくると、子どもにも意思が出てくるから、その子どもの意思と自分の意思をどうすり合わせていくか、それが必要になってきますよね。習い事を週に1日増やせば、送り迎えが必要な日も1日増える。家族で擦り合わせることが不可欠です。子どものやりたい意思を尊重してあげたい。でももっと習い事だけではない時間、自然に触れたり自由な時間はあった方が豊かなのではと思ったりもする。 そしてわがままかもしれないけれど私自身の時間も確保したい。
小島_子どものやりたいことと、親の意思や都合をすり合わせていく、それが本当に大変なんですよね。自分のことだって判断が難しいのに、子供のことは自分のこと以上に余計に考えてしまって、正解がわからなくなることもしょっちゅうあるんです。
ギリギリまで子どもを連れて行くか悩んで行ったネパールの旅。葛藤する自分自身への苛立ち。
山瀬_働きながら子育てもしている。これは私たちの共通点だと思うんですけど、親の休息って、そもそもどうやってとっていけばいいのかが気になります。
小島_子どもと一緒の時間を作るという意味では、私の趣味に子どもを連れて行くことはよくあります。最近だと、子どもを産んでからは初めて、ネパールにいくことを決めました。去年の冬のことなんですけど、産む前までは毎年通っていた場所です。でも、実はギリギリまで1人で行こうかと悩んでいました。でもどこかでやっぱり子どもを切り離せない自分がいて。私は自分勝手に生きてるようで、やっぱり子どもに色々見せてあげたい、経験させてあげたいという気持ちが大きいんです。でもその反面、1人で気ままに行きたいっていう気持ちも大きい。矛盾です。その葛藤が日々続いています。結果的には連れて行ってすごく良かったです。ひとりで行っていた時とは違う視野が広がりました。
山瀬_ 私は、今年の3月に個展でニューヨークに行くことにして。初めて子どもを置いてくんですよ。結構勇気がいるっていうか、聖さんと一緒で最後の最後まで連れてった方がいいのか悩んでました。すごく楽しみに思ってる反面、向こうで不安になるのかなって思ったり。聖さんと同じような葛藤を持ってます。ネパールは、子どもと一緒に行ったことで、どんなふうに広がったんですか?
小島_1人でも現地のガイドの方には頼るんですけど、子どもを連れて行ったら、これまで以上に彼らと深くなったというか。現地のガイドを営む家族にお世話になって、そこに同じ歳くらいの子どももいたので、それだけで向こうもすんなり私たちを受け入れてくれている感じがしました。行く前は、子どもの事を考えると、食事は大丈夫かなとか、装備は? とか色々と考えて気を遣っていたんですが、環境にもすぐに慣れてくれたし、食事も大丈夫だったので本当にありがたかったです。帰り際に子どもがお世話になったガイド一家のおばあちゃんが生きている間にまた来たいと言っていて、関わり合い方が違うだけで、私にとって新しいネパールが立ち上がったというか、発見でした。
――後編に続く
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Profile
小島聖 Hijiri Kojima
1976年生まれ、東京都出身。1989年、デビュー。1999年、第54回毎日映画コンクール女優助演賞を受賞。多彩な役をこなす実力派女優として、映画、テレビドラマ、舞台、CM等多数出演。著書に国内外での登山の様子を記録した『野生のベリージャム』(青幻舎)。父親が登山好きだったこともあり、「聖」という名前は聖岳に由来する。プライベートでは国内外の山に登り、現在は長野と東京の2拠点生活を送る。
山瀬まゆみ Mayumi Yamase
1986年東京都生まれ。幼少期をアメリカで過ごし、高校卒業と同時に渡英。ロンドン芸術大学、チェルシー・カレッジ・オブ・アーツ&デザインにてファインアート学科を専攻。現在は東京を拠点に活動する。抽象的なペインティングとソフトスカルプチャーを主に、相対するリアリティ (肉体)と目に見えないファンタジーや想像をコンセプトに制作する。これまでに、東京、ロンドン、シンガポールでの展示、またコム・デ・ギャルソンのアート制作、NIKEとコラボレーション靴を発表するなど、さまざまな企業との取り組みも行っている。