2026.3.3

オンとオフ、境界線のない中で見つけた余白 小島聖×山瀬まゆみ

PROJECT

ことなるわたしたち

山瀬まゆみ Mayumi Yamase

3か月ごとに共通のテーマで記事を紡ぐ特集企画となった『月曜、朝のさかだち』と『ことなるわたしたち』。今回のテーマは「わたしと『休息』の設計図」。前編では、一児の母でもある女優、小島聖さんに、教育のこと、ネパールへの旅を通して、子どもに対しての葛藤する気持ちなどを赤裸々に語ってもらいました。後編では、聖さんにとっての“休息”の概念について、ファシリテーター山瀬まゆみとともに伺っていきます。

大変じゃないってわかってるのに、一緒に行くと決めるまでとても時間がかかってしまう

山瀬まゆみ(以下、山瀬)_一人の良さ、親子であるからの良さって、同じことやったとしても、同じ環境に行ったとしても、違って見えてきますよね。

小島聖(以下、小島)_子どもとは旅だけではなくて、舞台や映画を観に行く時もあります。うちの子は、途中でトイレに行きたいとか言わないし、結構落ち着いて見ていられます。なので、子どもを連れてこうって思う自分もいるし、本当は1人で行きたい気持ちもある、なんで切り離せられないのだろうっていう気持ちもあって。そういう割り切れない葛藤をしている自分にイライラしちゃうことがあります。結局、連れて行っても行かなくても、状況はそこまで変わらないのに、連れて行くってことになるとザワザワする。自分でバランス悪いなと思います。でも切り離して一人で行ったとて、早く帰らなきゃってなるから。その時間が終わった瞬間には、日常に戻る。どっちにしても、子どものことが切り離せない、当たり前のことだけれどその葛藤を持ち続けています。

小島_かといって、べったりしている親子関係かと言ったら全然そうではなく。子煩悩というタイプとは真逆で、子どもに対しては早く自立してほしいという気持ちが強いので、引き離すじゃないけど、一人でできることはやりなさい、という方針でいます。でも、以前に記事で、子どもに自立を促す育て方をすると、家から独立するのが遅くなるみたいなことを読んで。逆なの!?って思ったり(笑)。

山瀬_ あ、私もそれ読みました。小さい頃は別として、大きくなってきた時、親が子どもに干渉しなければ、それはそれで家が居心地良くなるっていうのはわかる気もします。私は、まだまだ自分の子どもが独立するなんて先のことすぎますけど、いつか海外で生活できる時間を一緒に作れればなとは思ってます。

小島_自分が経験したことが良かったからですか?

山瀬_ そうですね。そこで出会った友人との繋がりとか、得た体験、経験が私にとってすごく大きなものになったので、早く自立をして欲しいからというわけではないけれど、娘にも海外で暮らす体験をして欲しいって思うんです。自分が今いる場所とは全然違う風が吹いて、匂いがして、肌の色が違う人たちがいる。世界にそういう場所があることを実際に感じて欲しくて。

子どもを言い訳にしていた時もある。でも、仕事は、自分のペースでやると決めた。

山瀬_聖さんにとって、仕事と子育てのバランスはどんなふうに考えてますか?

小島_バランスを考えて、仕事はこのくらいと、ペースを自分で決めていた時期もあったんですけど、決められない時もあるじゃないですか。それで、子どもがいようがいまいが、仕事はある時はあるし、ない時はない。なんかそういうこともひっくるめて、自分のペースでやろうって思うようになりました。結局、子どもを言い訳にしていたんだなって。今は子どもがいるからできないとか、そういうことではないのかも、と思ってきました。もちろん周りで子育てを支えてくれる環境がないと成立はしないんですけど。

山瀬_子育てが仕事のキャリアに活かされているって思うことはあります?

小島_子育て含めなんでも年を重ねて経験を積むことは役に立っていると思います。私は子どもがいることが正義とも思わないし、いなかったらいない生活があると思っているので、そんなに子ども中心な考え方は持っていないかもしれないです。

オンもオフもない日常。一人になりたい時はランニングへ。

山瀬_これまでの話を聞いてると、仕事、子育て、趣味、全ての生活の中に、はっきりとした境界線のようなものがないように感じました。今回、特集では、“休むこと”を改めて見直してみようと思っていましたが、聖さんの日常に、オンとオフの間に生まれる余白とか、ただ何もしない時間とか、そういう休息の時間ってあるものでしょうか?

小島_正直、休息という概念があんまり私にはないのかもしれません。でも時に一人になりたい、ふぅと一息つきたい願望はあります。そう思うとランニングをしています。その時間は自分のためだけの時間で、それが休息なのかな、と思いました。走るときは昔から何も持たないで出かけます。他のランナーの方を見ていると音楽を聴いたり、最近だと会議しながら走っている方もいる。それを見て思ったのですが、私のこのジョギング人生、ずっと英語を聞いていたらすっごい上手になったかも(笑)。私は外の音を聞かないと怖くて、というか落ち着かなくて。スマートフォンも持たないで、時計もせず、完全に手ぶらのスタイルで走ります。

山瀬_ ランニングによって、完全なオフラインの状態を作る、それが自分のためだけの時間でもある。それが聖さんの休息になっているのかもしれませんね。


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Profile

小島聖 Hijiri Kojima

1976年生まれ、東京都出身。1989年、デビュー。1999年、第54回毎日映画コンクール女優助演賞を受賞。多彩な役をこなす実力派女優として、映画、テレビドラマ、舞台、CM等多数出演。著書に国内外での登山の様子を記録した『野生のベリージャム』(青幻舎)。父親が登山好きだったこともあり、「聖」という名前は聖岳に由来する。プライベートでは国内外の山に登り、現在は長野と東京の2拠点生活を送る。

山瀬まゆみ Mayumi Yamase

1986年東京都生まれ。幼少期をアメリカで過ごし、高校卒業と同時に渡英。ロンドン芸術大学、チェルシー・カレッジ・オブ・アーツ&デザインにてファインアート学科を専攻。現在は東京を拠点に活動する。抽象的なペインティングとソフトスカルプチャーを主に、相対するリアリティ (肉体)と目に見えないファンタジーや想像をコンセプトに制作する。これまでに、東京、ロンドン、シンガポールでの展示、またコム・デ・ギャルソンのアート制作、NIKEとコラボレーション靴を発表するなど、さまざまな企業との取り組みも行っている。

Photo Mai Kise / Text Chie Kono / Edit Ryo Muramatsu

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