里山の環境整備をする朝 haru.×中村暁野【前編】
月曜、朝のさかだち
『月曜、朝のさかだち』シーズン2、第18回目のゲストは文筆家、エシカルショップ店主の中村暁野さんをゲストにお迎えしています。
『ORBIS IS』のシーズン特集テーマは「私と休息の設定図」。この特集では、暮らし方も生き方も働き方も混ざり合い、オンとオフの境界線がどんどん曖昧になっている今、改めて休むことそのものをゲストのみなさんと一緒に考え直していけたらなと思っています。

そんな今回の朝活は、里山の土壌環境整備をしました。今回は、神奈川県相模原市藤野にある『めぐるめぐみふぁーむ』さんの畑を訪れ、畑の土をより良いものにするために、柄の先端に三角形の鋭利な刃が付いた、立ったまま草刈り・土ならし・穴掘り・土寄せが効率的にできる万能な農具「三角ホー」を使い水脈作りをお手伝い。

なるべく自然なかたちに作るため、水脈の溝を掘る際も、真っ直ぐに掘り進めるのではなく、いろんな角度から掘り進める「やたら堀り」で約100mの水脈を作りました。
普段畑に触れる機会の少ないharu.さんは「土の匂いがする」と言いながら、黙々と掘り進め、中村さんは慣れた手つきで進めるも「結構腰が痛くなる!」と意外と力仕事な朝活。
掘った水脈に、「めぐるめぐみふぁーむ」さんが作った竹炭を撒き入れ、その上からびわの木の剪定時に出た枝を敷き詰めていく二人。そうすることで、土全体に空気が循環し、虫や微生物が活発になり、土が年々良くなっていくそう。

「こうやって捨てられてしまうかもしれないものを使って循環を作っていけることを知ってもらうだけで、社会は全然変わっていく」と、里山暮らしをしている中村さんは感銘している様子でした。

朝活を終えた二人は、朝活を振り返りながら、自然と人間社会の共通点、中村さんが制作する雑誌『家族と一年誌』の創刊の思い、子どもを産み育てることで変化した家族関係、などについてお話しいただきました。
本編へ進む前に、まずは視聴者さん、読者さんから集めた「ゲストに聞いてみたいこと」にお答えいただきました。今後も『月曜、朝のさかだち』に遊びに来てくれるゲストのみなさんに聞いてみたいことを募集しているので、ぜひORBIS ISのSNSをチェックしてみてくださいね!

中村暁野さんに聞きたいコト
Q.里山で暮らしはじめて驚いたこと、住む前に抱いていたイメージと違ったことはありますか?
A.東京で暮らしていた時は「ご近所付き合い」ってどっちかというと大変、めんどくさい、ネガティブな印象や恐れがありましたが、「ご近所付き合い」や人との関わりが多い里山暮らしをして、暮らしの中に友達や家族とは別の人の繋がりがあることがなんとありがたく、心強く、幸せなことなのかを知れました。
Q.パートナーとはどうやって仲直りしますか?
A.がまんしたり、言わずにあきらめずに思ったことは一度ぶちまける。お互いぶちまけきった後は和解点が自然と見つかったりする気がします。

土も人も同じ
風通しと循環が大切
haru._今朝は暁野さんと里山の土壌環境整備をしてきたんですけど、この朝活は暁野さんが推してくださったんですよね。
中村暁野(以下:中村) _ 私は2017年に里山と呼ばれる小さな町に引っ越してきたんです。その前は私も東京で暮らしていたので、こういう地域に来ると「自然がいっぱい!山だ!」って思ってきたんですけど、実は山ってとても荒れていたんです。日本の山や森って、もともと戦後に人が植えて人工的に作られた場所が多くて、今ではいろんな問題からその山や森が放置されて、光が入らず、動物や虫が減って、どんどん荒れてきてしまっているんです。そういうことに住み始めてから気づいて。そこから、私が住んでるこの町のそういった荒れてしまった場所を手入れして、もう一度いろんな循環を良くして、生きた森や山にしていこうという活動をしている方がいることを知ったんです。私もそういう活動に参加したかったんですけど、日々に追われてなかなかできなくて。
山の環境整備と言うと、ヘルメットを被って壮大で大変な作業だと思いがちなんですけど、実は土地の環境整備って、すごく小さなことからできることがあるっていうのを知って、今回朝活に提案させていただきました。
haru._暁野さんがおっしゃった通り、環境整備って、大きな機械を使ったり大変なのかなって最初は想像していたんですけど、長いドライバーみたいな器具で土に穴を掘って竹の炭を入れたり、あまり大袈裟なことでなくてもいいんだとすごくびっくりしました。
中村_土や自然の世界も私たち人間の社会と一緒なんだなって思うんですよね。小さなことって意味がないって思っちゃいそうだけど、全体を良くしていくためには目の前の小さなことを始めるだけで全部が繋がっていき、ちょっとずつ良くなっていくっていうことを、私も今日改めて思いました。庭に穴を何個も開けて、そこに炭や落ちてる枝を入れるだけでも整っていくって不思議だけど、そういうことからでいいんだっていう新たな気づきがありました。
haru._それをすることで風通しが良くなると、先生がレクチャーしてくださいましたね。「風通しを良くすることが一番大事」というのがすごく印象に残ってます。
中村_「人と一緒」って言ってましたね(笑)。本当にそうだなって思いました。
haru._暁野さんのプロフィールには「家族」というワードがたくさん出てくるんですけど、暁野さんの音声メディアでの発信や執筆での活動で「家族」をテーマにしようと辿り着いたきっかけがあったんですか?
中村_子どもが三人いて、長女が春から高校生になるんですけど、子どもが小さなころは東京で暮らしていたんです。夫との生活スタイルも今とは全然違って、一言で言うと家族というものにコンプレックスがすごくあったんです。例えば、今だったら夫婦間の愚痴とかをSNSに匿名で書いて発散したり、共感したりすることがあると思うんですけど、私が子育てを始めた頃は私自身もSNSをまだやっていなかったんです。そんななかで、パートナーと子どもを育て始めて、今までとは全然違う関係になった不満や不安がくっきりしてきたときにすごく孤独を感じたんです。コンプレックスや不満のせいで、自分が満たされない感じを愚痴で消化したくなかった。
こうした思いを何かいい方向に変えていきたいなという気持ちがあったのと、長女を産んだ直後に東日本大震災が起こったんです。そういう自然災害や社会的な大きな出来事って、自分とも繋がってるんだということを、子どもを持ったタイミングで自覚して。そこから、自分ができることは、今いる家族という一つの小さな社会をいい方向に変えようとアクションすることが、もしかしたら大きな社会にも繋がってくるんじゃないかとぐるぐる考えた末に辿り着いたんです。そのときに「家族」をテーマに自分の活動をしていこうって思いました。
haru._そこから『家族と一年誌』*①という雑誌が生まれるんですね。
中村_そうなんです。家族って外から見るといいところばっかり見えたりするじゃないですか。でも、どんな人にも、どんな家族にも、どんな関係にも、いいところもそうじゃないところも必ずあるし、その両方を大事に思えるようなものができたらいいなと思ってます。表も裏も、光も影も、全部あって一つの人間関係の魅力だし、醍醐味だって自分でも思えたらいいなと思って、雑誌を作り始めました。
haru._一番最初は暁野さんのご家族を題材に作ったんですか?
中村_違うんですよ。一番最初は、私がコンプレックスを感じていた、眩しさを感じていた家族のところに飛び込み取材をさせてもらいました。それは自分にとっても癒しのプロセスだったんです。この家族を眩しく感じてコンプレックスを感じるということは、「私と自分のパートナー、子どもに対して自分は本当はどう思っているんだろう」「何を心から望んでいるんだろう」みたいな、自分一人では向き合いきれないところに向き合うプロセスだったなって思います。違う家族と出会うことで、自分たちを逆に見つめることができるというか。
haru._確かに、自分たちのことを客観的に見つめるのってすごく難しいじゃないですか。だから、他者を通して自分の気持ちに気づいたりするのって、私ももともとマガジン作りをそういう感じで始めたので、共感します。
中村_ありがとうございます。
haru._今は何冊目まで作ったんですか?
中村_それが全然で、2号しか作れていないんです。でも、それまでは違う家族を通して自分たち家族を見つめていたけど、今では真正面から自分たちのことを見つめられるようになり、自分たち家族のエッセイ本を出させてもらったりしました。そのなかで、自分たちの暮らしにも意識をより向けるようになり、社会との繋がりとか、社会に対して一個人ができることはなんだろうと考えることが多くなっていったんです。子どもも大きくなったり、増えていったりしたこともあって、環境を変えて里山に引っ越しました。
そのなかで「エシカル」というテーマが自分のなかですごく大切なものになっていき、今は『家族と一年商店』*②という家族の暮らしを照らすようなエシカルなお店を運営したり、どんどん繋がっていったんです。
haru._派生していってる感じですね。暁野さんが家族について執筆されたり、発信することで暁野さんの家族が影響を受けたことや、変わったなと思うことってありますか?
中村_当たり前のことなんですけど、「違ってていい」ということを理解し合えたというか。頭では誰でもわかってると思うんですけど、自分と子どもは違う人間だということや、自分とパートナーは違う人なんですよね。やっぱり、近しい人とは共感できる部分や理解し合える部分が多くないといけないんじゃないかって思ってしまったり、「なんで分かってくれないんだろう」と怒りが生まれたり、がっかりすることに繋がったりすることがあったんですけど、「違っていいんだな」「違うことってありがたいな」って思えるようになったことで、お互いを認め合えるように変化していったなと思います。
haru._本当に近しい存在だからこそ分かってほしいってすごく思っちゃいますよね。「言葉で伝えなくても、感じとってほしい」って思ったり。
中村_「私がこんなに真剣に考えていることをなんで同じ熱量で考えないんだろう」とか。つい自分が正しいみたいになってしまいますよね。家族って自分の正義を相手に押し付けがちだなって思ったりするんですけど、そこからみんな違っていいと思えるようになったのは大きいですね。

変化することは、知らない自分と出会えること
haru._暁野さんの『Voicy』*③をたまに聴くんですけど、そこでも家事分担のバランスを最近はよくできているけど、昔は全然できていなかったという話を赤裸々に話していますよね。子どもたちとの関係もそうだと思うんですけど、夫婦間の関係性がすごく大きく変化したのかなと思ったんですけど、お子さんが産まれてから、お二人の関係性って大きく変わるものですか?
中村_人によると思うんですけど、うちの場合はものすごく大きく変わったし、変わり続けてるとも思っています。長女が小さい頃の夫のエピソードを語ると、「そんなやつもう見限れ!」みたいなエピソードもいっぱいあるんです(笑)。そういうことがあると、やっぱり諦めちゃいそうになるじゃないですか。割り切って諦めた方が自分の感情的にも楽になってくるところがあると思うんですけど、諦めなかったということが一つ、過去の自分を褒めたいところだと思っています。喧嘩をすることを怖れず、ぶつかり続けて一ミリ変わったかなみたいな。そういうミリ単位の変化を諦めなかったら、気づいたら変わり合っていたんだなと思います。今では夫自身も、過去の自分は信じられないって言うぐらい、今は一つのコミュニティを一緒に動かしていくパートナーだと心から思えるところまで変わりました。
最初のうちにうまくいかなかったり、がっかりすることがあるのって、ある意味当たり前かなと思うし、そこで諦めないことで、その先が見えることもあるなと今では思っています。
haru._実際変わったなと思えるまでに何年ぐらいかかりましたか?
中村_意外と長くて…10年ぐらいですかね(笑)。
haru._そうなんですね。私も事実婚というかたちをとってから、5年ぐらい経ってるんですけど、私たちは子どもを持っているわけではないので、そこまで関係性は変わっていなくて。お互い喧嘩することを避けるタイプなので、話し合いはするけど喧嘩をしたことがなくて。でも、ここから家族が増えるとなったら、ものすごく変わるんじゃないかという予感はしています。
中村_それはたぶん、そうですね(笑)。
haru._そのときに、自分はどういうふうに相手と向き合うんだろうと思うと、そこがちょっと怖いと思ったりします。変化することはいいことなはずだと思うんですけど、その変化に自分が踏み込めるのかなという怖さを感じます。
中村_家族のかたちが変わるので、わかりやすいのが子どもだと思うんですけど、子どももまた自分とは全然違う存在で。本当に突然アンバランスな関係になるんですよね。この子供の存在は、私も夫も未知の存在で、未知なるものとの向き合い方もそれぞれ違うっていうところで、その違いがよりくっきり出てくるんです。だから、夫と一緒に子育てするということもめちゃくちゃ壁になっていました。でも、全然違う人たちと一緒にいることで、自分の想像や想定と全然違うことが起きたときに、自分一人では引き出せなかった自分と向き合わざるを得なくなるじゃないですか。これが家族じゃなかったら、ちょっと距離を置いたり、自分が苦しくないスタンスで付き合っていくことができるけど、家族ってそれができないんですよね。苦しみが突きつけられ続けることで、自分だけでは絶対に出会えなかった自分とやっと出会えたとも思ったし、ある意味今までは自分のことしか考えてこなかったんだなって、家族と衝突することを通して知ったなと思います。
初めて自分という視点以外の、家族というものを通して社会や世界に目を向けられるような自分になったなと思います。なので、苦しかった時期が長かったですけど、そのことを通さなかったら感じられなかった社会や世界の痛み、他者の痛みをやっと想像できる自分になれたと思うので、これは私を人として成長させてくれた大きな機会だったなと思いますね。
haru._お子さんが三人いらっしゃると思うんですけど、それぞれ違う性格だと思うので、それもまたおもしろそうですよね。
中村_本当におもしろいですけど、大変ですね(笑)。それぞれの子どもが私に感じさせてくれることって全然違うんです。まだ全員育て途中ですけど、その時々の成長や、一人ひとりから得られる学びはそれぞれですね。
そこまでいっても自分は未熟で「本当にすみません」と思わされることが多い。でも歳を重ねると、そうやって心から反省したり、自分の感情が揺さぶられて後悔したり、変わりたいと思えたりすることもあまりないじゃないですか。
haru._怒ってもらえることもないですしね。
中村_なので、感情的に訴えかけてくれることで、自分を常に「もっとこうありたい」と思わせてくれるので、すごくありがたい機会だなって思います。
haru._ご長女が15歳ということで、多感な時期じゃないですか。自分の15歳の頃を振り返っても、家族と外の世界との間で揺れ動く時期でもあると思うんですけど、親子喧嘩とかってされるんですか?
中村_壮絶な反抗期があったんですけど、一山越えましたね。それも夫婦関係とある意味同じで、終わりが来るか分からず、二年ぐらい苦しんだんですけど、そこを越えてくれて。ある意味一人の人として、自分とは離れた存在としてリスペクトしている部分もありますし、でも、まだ子どもなところもある。おもしろいですね。長女がアドバイスをくれることもあります(笑)。
haru._どんなことでアドバイスくれるんですか?
中村_私が悩んでいたり、落ち込んでいたりすると、「ママはこういうところあるんだから、大丈夫だよ」みたいに言ってくれたりしますし、グサッとくる指摘もあります。ある意味、夫以上に私の全てを知ってるのかなって思う。長女はもちろんいいところもきっと認めてくれてるし、「本当にママって弱いな」とか「また私にあたってきてるよ」みたいなことも全部受け止めてきてる存在だと思うので、本当に心強いですね。
haru._すごくバディみたいな感じですね。
中村_そうですね。そんなふうに言われたら娘は嫌かもしれないですけど(笑)。
haru._お子さんたちはシュタイナー教育*④を受けていますよね。私も通っていたんですけど、シュタイナーって特殊な学校なので、思春期の頃は学校の世界では見られない外の世界のキラキラとか、アイドルの世界とかにすごく憧れがありました。
中村_本当にまさにそんな感じ。やっぱりシュタイナー教育って、今いる環境や社会に対する目もすごく養われるような環境じゃないですか。だから、娘もよく「普通の青春がしてみたい」と言いつつ、今の環境を自分で最終的に選んで、高校も引き続きシュタイナーで学ぶことを決めていたので、楽しみにしています。私は「外はキラキラして見えるでしょうね」って思いながら聞いていました。
haru._知らないからこそ期待値が高まっちゃうこともありますもんね。でも、ぜひ娘さんともお話ししてみたいです。
中村_ぜひ!むしろ娘の方がお話ししたいんじゃないかな。
対談は後編に続きます。後編では、暁野さんが考えるエシカルの意味、ショップ『家族と一年商店』の役割、「無理のない生き方」という休息方法、「子どもは子どもでいさせる」重要性についてなど、盛りだくさんにお話しいただきました。
そちらも是非楽しみにしていてくださいね!
それでは今週も、いってらっしゃい。
ゲストの中村さん家族が創刊した、一つの家族を一年間に渡って取材して、一冊丸ごと一家族を取り上げる雑誌
*②『家族と一年商店』
ゲストの中村暁野さんが店主を務める藤野駅前にある暮らしを照らすエシカルショップ
*③『Voicy』
厳選されたパーソナリティによる音声コンテンツを“ながら聴き”できる、審査制の音声プラットフォーム
*④シュタイナー教育
ルドルフ・シュタイナーが提唱した、子どもの個性を尊重し、意志・感情・思考のバランスの取れた成長を目指す芸術的な教育理念
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Profile
中村暁野
文筆家・小商店主
家族と共に2017年より東京から少し離れた里山に暮らす。
一つの家族を一年間に渡って取材して、一冊丸ごと一家族を取り上げる雑誌「家族と一年誌 家族」を自身の家族と共に2015年創刊。以後、さまざまな媒体で家族や暮らしをテーマに執筆活動を開始する。
2021年、5年間自身と家族のことを毎日綴り続けた日記をもとに『家族カレンダー』(アノニマ・スタジオ)を上梓。
「家族」という最小単位の社会から、この大きな世界の問題を考え続けていく。