里山の環境整備をする朝 haru.×中村暁野【後編】
月曜、朝のさかだち
『月曜、朝のさかだち』シーズン2、第18回目のゲストは文筆家、エシカルショップ店主の中村暁野さんをゲストにお迎えしています。
『ORBIS IS』のシーズン特集テーマは「私と休息の設定図」。この特集では、暮らし方も生き方も働き方も混ざり合い、オンとオフの境界線がどんどん曖昧になっている今、改めて休むことそのものをゲストのみなさんと一緒に考え直していけたらなと思っています。

記事の前編では里山の環境整備をした朝活を振り返りながら、自然と人間社会の共通点、中村さんが制作する雑誌『家族と一年誌』の創刊の思い、子どもを産み育てることで変化した家族関係、などについてお話しいただきました。

後編では、中村さんが考えるエシカルの意味、ショップ『家族と一年商店』の役割、「無理のない生き方」という休息方法、「子どもは子どもでいさせる」重要性についてなど、盛りだくさんにお話しいただきました。
本編へ進む前に、まずは視聴者さん、読者さんから集めた「ゲストに聞いてみたいこと」にお答えいただきました。今後も『月曜、朝のさかだち』に遊びに来てくれるゲストのみなさんに聞いてみたいことを募集しているので、ぜひORBIS ISのSNSをチェックしてみてくださいね!

中村暁野さんに聞きたいコト
Q.エシカルな暮らしを実践していく上で、まずはじめにしたことはどんなことですか? 都会に暮らしながらもできる小さなことなど、アドバイスいただけたら嬉しいです。
A.ペットボトルは一生買わない!と決めたことです。
季節の花、季節の食べ物を知ることや、チェーン店やショッピングモールでお茶したり買い物する頻度を少し減らして、個人で経営している小さなお店で買い物をしたりお茶をするのを選ぶのもおすすめです。

完璧でなくてもいい
エシカルな暮らしを自分のペースで続けていく
haru._記事の前編でも暁野さんがやられている暮らしを照らすエシカルショップ『家族と一年商店』*①について、チラッとお話しを伺いましたが、改めてこのお店についてご紹介していただけますか?
中村暁野(以下:中村) _ もともとコロナ禍のときにECショップでオープンしたんですけど、今は私が住んでいる藤野という里山の駅前に週2日間だけオープンするという小さなお店をしています。そもそもエシカルと言って皆さんパッと想像できますか?
haru._私もシュタイナー学校に通っていたので、エシカルなものを置いているショップがすごく身近にありました。その影響で、「ああいう感じかな」と想像することはできます。
中村_最近だとオーガニックやサステナブルっていう言葉はいろんな人にとって身近になっているのかなと思っていて。エシカルという言葉もエコぐらいの感じで伝わる言葉なのかなと思っていたんですけど、「エシカルってなんですか?」って聞かれることが何回かあるんです。エコやオーガニックは伝わるけど、エシカルってまだ伝わらないこともあるんだと最近思ったんですよね。直訳すると倫理観っていう意味。なので、うちのお店ではサステナビリティとかオーガニック、プラスチックフリーのものを扱っているんですけど、「人としてどう生きたいか」ということを考えるきっかけになるお店になったらいいなと思っています。ただ環境にとっていいということだけではなく、自分にとっていいことは環境にとっても、社会にとっても、世界にとってもいいこと。自分が買ったり選んだりするものって、全部繋がっているということをポジティブに捉えられるようなお店になったらいいなといつも思っています。

haru._地域の皆さんにとってはどんな場所になっているなと感じていますか?
中村_私が住んでいる藤野という街は、持続可能な循環型の暮らしをするパーマカルチャー*②という考え方があるんですけど、日本のパーマカルチャーの中心的な役割を果たしている『パーマカルチャーセンタージャパン』*③という施設が藤野にあったりと、環境問題について考えながら暮らしていきたいと思っている人がもともと多い地域だと思っていて。なので、日常使いのお店としてうちを使ってもらっていますし、他にもうちみたいなお店がいくつかあったりと、人と人との繋がりがすごく濃い街なんです。なので、とてもいい感じに受け止めてもらっていますね。
haru._そういう地域だからこそ、やりたいことが伝わったりするのかもしれませんね。東京にいると、いろんなものがジャンル分けされて、レッテルを貼られて成立しているというか。エシカルやサステナビリティという言葉を使った瞬間に、先入観で「意識高い系ね」と判断されてしまうことも少なくないなと思ったりします。
中村_そうですね。うちは本当に小さいお店なんですけど、北海道や鳥取とか、めちゃくちゃ遠くからきてくれるお客さんもいるんです。それって、まだまだうちみたいなお店が特別な場所なんだなと思うんです。まだまだエシカルな思考を持つお店や場所が当たり前にはなっていなくて。でも、藤野の街のなかでは当たり前な感じになっていて、それはすごくありがたいです。そういう感覚をもっと広めていけたらいいなと思います。
もともと環境問題に関心はずっとあったんですけど、自分自身で変わろうと決意したのは9年前で、長女が8歳のときに放った言葉がきっかけだったんです。その頃、ちょうどプラスチック問題に関する本が少しずつ出だした頃で、パネル展示を見に行ったときに、プラスチックを食べて鳥が死んでしまった写真を娘が見たんです。その後に、七夕の短冊に「プラスチックを捨てる人がいなくなりますように」と書いていて。子どもってそういうことを自然に言うと思うんですけど、大人って「いいこと書いたね」「そうだよね」って言いながら流しちゃうじゃないですか。私自身も、「そうだよね」って思いながら、「でもそのおかしい世界を作ってるのは私たちなのに、何もしてこなかったな」と思ったんです。そのときに、8歳の長女に対して「そうだね」で流すのではなく、この言葉とちゃんと向き合う一人の人として娘の前に立ちたいと思ったんですよね。
そこから自分の暮らしをより意識し始めたんです。一人ひとりができることってめちゃめちゃ小さいことなんですけど、それでも自分が変わることで自分の人生が変わっていく。そういうことをもっといろんな人とシェアしたいなと思い、お店をやってみようと思ったんです。なので、何かしたいけどできていない矛盾を抱えてモヤモヤしている同世代の方がきてくださるのはすごく嬉しいですし、そういう人と繋がっていくことが、私自身すごく救いであり、励みになっているなと思います。
haru._そういう人ってすごく多いと思いますし、私もそのうちの一人だなってすごく思います。やっぱり忙しい日々のなかで、「そういえばあれがなかったな」と思ってドラッグストアに行ってなんとなく手に取る日用品に対して、「これじゃなきゃダメ」っていう気持ちはないんです。「環境にもあまりよくなさそうだけど、時間もないしこれでいいや」みたいな感じで買い物をしてしまう。そういうことにずっとモヤモヤしていて。どうせだったら自分が本当に納得しているものを、服だけじゃなく、日用品でも買いたいなと思うんですけど、なかなかできていないです。
中村_うちのお店に来てくださるお客さんからもよく同じことを言われます。私はそういうときに、「私もできてないですよ」って言うんです。私自身も、ヤダなと思いながら、今日はもう無理っていうときは適当なものを買って食べちゃうときだってあります。人ってやっぱりそうだと思うんですよね。もちろん自分を完璧に律して、いいと思う選択ばかりできたらいいけど、できない瞬間って誰しもあって当たり前だし、それはダメなんかじゃないということを伝えていきたいです。
「100%できてないとダメ」とか「今日できなかったから意味がない」じゃなくて、自分のできなさも受け止めつつ、「選べるときはこういうものを選ぼう」とか「それでも私はこういう世界の方がいいと思っている」ということを諦めずに持ち続けることが大切。そんなきっかけになれたらいいなと思っています。
そう思わないと、今の社会のなかでこういう暮らしをし続けることって難しいなと思うんです。ある意味、退路を断ちたい気持ちもあってお店を始めたのもあるんですよね。お店を始めたら自分は逃げられないじゃないですか(笑)。できないときもあるけど、いいと思える選択をしたいと思い続けられる自分の居場所を作ったとも言えるかもしれないです。

haru._暁野さんのそのバランスって、エシカルな暮らしを始めたいと思っている人をすごく勇気づけると思います。エシカルなことについて発信されている方のなかには、「こうでないとダメ」という発信者の方もいらっしゃる。それによって始めづらいと感じている人もいると思うし、余計な分断が生まれているんじゃないかと思っていました。
中村_その人ができるスタンスで、できるところからやればいいと本当に思います。自分と違うからといって、それをジャッジしたり否定する必要も本当はないと思うんです。自分が気持ちよくいられるとか、自分を好きでいられるということが、やっぱりいい社会の一番の基本だと思っていて。自分が気持ちよくいられるためには、理想ばかりではなく、至らぬ自分もよしよしってしてあげることも大切です。
haru._『家族と一年商店』ではフロスが人気と聞きました。
中村_フロスも人気だし、隠れ人気者がいろいろあるんです。私は固形石鹸を常に推していて、ボトルに入っているものよりゴミも減るしコスパもいいんです。でも固形石鹸って溶けやすいので、壁に付けておけるマグネット式のホルダーも人気です。
haru._今、うちで固形石鹸を使うことを想像したら、「あそこに置いたらビシャビシャになっちゃうな」と思っていたので、そういうアイテムはすごくいいですね!
中村_そうなんですよ。エシカルなものって使いやすさが重視されていないんですけど、そこを解消したり、補助するアイテムが作られ始めているんです。
haru._他にもおすすめはありますか?
中村_私が住んでいる藤野で、タンザニアの有機カカオ農家さんから直接カカオを買い付けて作られているクラフトチョコレートがあるんです。里山の問題として竹がどんどん伸びて光が土壌に届かなくなってしまう問題があって、今日の朝活でもその竹を竹炭にして土壌再生に使うと『めぐるめぐみふぁーむ』の方がおっしゃっていたと思うんですけど、藤野で作られた竹炭を使ってカカオの焙煎をしているんです。しかも、チョコレートを作る過程で必要なエネルギーも積極的に太陽光を使って、再生可能エネルギー100%を目指して作ってるクラフトチョコレートが、めちゃくちゃ美味しくて、藤野でしか買えないのでおすすめしています。
haru._いいですね。食べてみたい。フレーバーとかはあるんですか?
中村_カカオと有機のお砂糖だけのシンプルなプラントベースチョコレートがあって、去年からカシューナッツとカカオで作っているプラントベースホワイトチョコもできて、それもめちゃくちゃ美味しいです。パッケージも藤野のアーティストさんが描いた絵で、すごく可愛いので、プレゼントにもおすすめの一枚です。
haru._今はオンラインショップはリニューアル中なんですよね?
中村_そうなんです。今は私一人でやっているので、子育てとオンラインの発送とかで大変で。働き方もどうしたら持続していけるかを模索しているので、今はオンラインは休んで、店舗だけでやっています。でも、いいかたちでリニューアルしたいなと思っています。

「自分を第一に考えて生きる」という選択
haru._暁野さんは子育てはもちろん、お店の経営、SNSの発信と、日々大忙しだと思うんですけど、自分と向き合う時間って取れていますか?
中村_自分と向き合う時間ほしいですね(笑)。そう思いつつ、全部自分が選んだことというか、自分ができるだけ得意なこと、やっていて苦しい要素をどうしたらなくせるかを考えて今のスタイルに辿り着いているので、基本的にストレスを感じることはないんです。好きなことばかりがあるっていう感じなので、それはすごくありがたいことだと思っています。そんな暮らしをどうしたら実現できるんだろうということを10年ぐらい考えて、今やっと少しずつ築けてきたかなというところですね。
haru._暁野さんは試行錯誤したり、考える時間を長く設けるんですね。
中村_というより、思いついたらやってみて失敗しての繰り返しです。やりたいと思ったことを我慢できないみたいなところがありますね。思いついて、自分がやらなきゃと思ったら、やってみたいと気が済まないというか。だから、本を作ってみたり、お店を始めてみたりして、一つひとつが全部自分のなかで繋がってきて、今があるという感じです。やってきたことを振り返ると、一見繋がってない感じに見えるかもしれないんですけど。
haru._側から見ていても、繋がっているなって思います。
中村_本当ですか!よかったです。
haru._じゃあ、お休みの時間っていうのはあまりないんですか?
中村_休息ということにダイレクトに繋がるかわからないんですけど、藤野に住み始めて9年目なんですけど、こっちに来てびっくりしたことがあるんです。うちのお店も週2しかやってないんですけど、他のお店も基本的にそんな感じなんです。パン屋さんや日用品のお店、素敵なカフェとかも週2、3日しかやってないみたいなお店が多いんですよ。引っ越してきた当初は、「なんでそれだけしかやらないんだろう」って思っていて、いざお店に行ってもオープンして2時間くらいしか経ってないのに商品が売り切れていたりして。でも、しばらく暮らして気づいたんですけど、それぞれのお店がお客さんを一番にしているというより、自分自身を一番に大事にしているんですよね。自分の暮らしのなかに働くということがある。2日お店を開けるためには、他の日も準備しなくちゃいけないじゃないですか。東京のお店は朝から晩まで毎日開いているけど、それってすごいことだと思うんですよね。すごすぎることが当たり前だと思っていたけど、それをするには自分の時間さえもお客さんが求めるものに応えたいっていう気持ちを向け続けないといけないなと思ったんです。もっと自分を第一にして働くこともアリなんだなっていうのは、こっちに来てから思うようになりました。「売り切れていてごめんなさいね。でもこれ以上やったら仕事を楽しめなくなる」という言葉を聞いたときに、すごく素敵な考え方だなと思ったんです。みんなが自分を一番にしたら、許し合えることも増えるなとも思うんです。私自身もそこから、商品がなくなってたらそれはしょうがないと思えるようになったし、それが自然だなって思えるようになりました。その考え方がすごく大きい変化でした。
だから、いわゆる休息じゃないのかもしれないけど、自分を第一にするということは、「休める時に休もう」ではなく、「無理のない生き方をしていけるコツ」なのかなって思います。

haru._すごくしっくり来ました。このテーマって、都心に住む人がどうやって自分を大切にする時間を確保するのかということだと思うんですけど、確かに、日常的に自分が心地の良い方向に生き方を変えていくことがすごく大事なんだと思いました。
中村_でもそれを一人でやるっていうのは勇気がいることだし、状況が許してくれなかったりということもある。私もこうして里山に引っ越してきて初めてハッと思えたことでもあるので。でも、これからはどんどんそういう選択を勇気を持ってしていけるようになったらいいなって思います。
haru._周りが既にそういう環境であるっていうのは、自分を変えやすそうですよね。私たちは、フリーランス集団みたいな感じで働いているので、どれだけすぐに対応できるかみたいなところが美徳になっちゃっていて、「迅速に対応してくれてありがとう」みたいな感じになっちゃうのでなかなか辞められないんですよね。「今日はお休みです」って言えればいいんですけど、「特急対応しました」ということにお互いそれをいいことみたいにしていて、それもよくないなって思いつつ、難しいなとも思います。
中村_でも、そうやって頑張っていろんな人の思いに対応するっていうこともやっぱりすごい能力だなと思います。そこから学ぶこともたくさんありますよね。そういう生き方で本当に苦しくなく生きられる人もいるし、苦しくなる人はそうじゃない道もあるよと思います。
haru._そういうふうに思っておくのがすごく大事かもしれませんね。
暁野さんはお子さんがいらっしゃいますが、私が子どもの頃はまだスマホがなかったから、遊ぶイコール自然のなかで遊ぶだったんですけど、今の子どもたちはデジタルコミュニケーションがすごく発達しているじゃないですか。子どもたちの様子を見ていて、昔と変化しているなって感じることってありますか?
中村_記事の前編でも話したんですけど、うちの子たちはシュタイナー教育*④の学校に通っていて、シュタイナー教育では子どもたちが大きくなるまでデジタル機器やメディアと離しておこうという考え方があるんです。
haru._そうですよね。お家にテレビってありますか?
中村_テレビもないですし、スマホやゲームも持ってないです。今って子どもたちはテレビを観るのかな?
haru._どうなんですかね。
中村_YouTubeとかがあるからきっとテレビどころじゃないですよね。うちの長女は15歳なんですけど、まだスマホを持ってないのでSNSやLINEもやれない。わかりやすく言うと、シュタイナーって子ども時代をできる限り引き伸ばしてあげようっていうことを一つ大事にしている教育なのかなと思っています。
私も今の社会のなかでメディアというものは働くうえでも、生きるうえでも切り離せないものになっていますけど、子どものときに触れる必要はないって思っているんです。小さな大人を作る必要は本当にない。大人だとしても、メディアとうまく付き合えてないぐらい、すごく難しいものじゃないですか。そんなものを子どもに与えたら、依存しちゃうし、世界がすべてそれになっていってしまう。大人もそれを与えた方が楽だとは思うんですけど、子どものときは子どものときにしかできないことをしてほしいと思っています。大人になったらいくらでもできることを今する必要はないってすごく思うので、遊んでほしいなって思っています(笑)。だから、うちの子たちは遊んでますね。
そういう今の子どもたちに対する社会が、大人にとって都合がいい社会なんじゃないかって違和感を持ってる人が来てるような学校だったりするので、なんとか子どもの子ども時代を守ろうとみんなで試行錯誤している感じがあって、すごくありがたいです。
とはいえ、大人はそこから離れられないような社会設計になっているから、矛盾は感じています。それだけ離そうとしてもスマホが気になるし、そうすると子どももスマホに触りたくなる。そういうところとどうやって大人が付き合っていくのかということを、私も夫と一緒に試行錯誤しています。
本当に身体をのびのびと使って、五感を働かせて受け取れることが、必ずこの先何かを考えたり、学んだり、感じたりしていくときに欠かせない要素だと思うんです。だから、小さな画面を見て受け取るということは、もう少し大きくなってからでいいと思っています。
きっと都市部でも、うんと目を凝らせばいろんな発見があると思うし、遊べるものもたくさんあると思うんです。子どもってなんでも遊び道具にしちゃうじゃないですか。それを良しとしない社会もあるのかな。お行儀良くマナーやルールを守ることも大切だけど、それが第一ではないんじゃないかなって思います。
haru._休息の話って、大人のことだけじゃないよなって思っていて。普段お子さんと接している暁野さんに子どもの休息についても聞いてみようと思っていました。
中村_息子が先日9歳になって、「8年生きてみてどうだい?」って聞いたら、「楽しいよ!」って言ったんです。今はそれで本当にいいなって思っていて、「じゃあ9歳も楽しく過ごせるといいね」と思っています。
haru._そうですよね。大人になったら誰しもがいろんなことを経験するから、子ども時代は子どものままでいいっていうのは、そういうふうにいられる環境が大事ですし、大人が整えたいですよね。

「学び」はなりたい自分になる方法
haru._私がシュタイナー教育を受けてよかったと思うのは、「忘れること」が割と推奨されていること。説明がすごく難しいんですけど、授業も数学を集中的に学ぶ月間があったら、次は歴史だったり。そういう集中的に勉強して、その期間が終わったら一旦忘れていいよっていう教育なんですよ。教科書もなくて、自分で先生の話をノートにまとめて、自分の教科書ができていく。それが私には合っていて、学んだことを何もかも覚えておいて、それをテストで正解として出していくみたいな勉強の仕方だったらキツかっただろうなと思います。一定期間勉強して、忘れていくものは忘れていくみたいなサイクルがすごく心地よかったんですよね。
中村_haru.さんはシュタイナー教育を受けたのは中学から?
haru._私は小学校と高校なんです。中学は日本の公立に通っていて、それはそれでギャップがすごく大変でした。
中村_小学校は日本の?
haru._ドイツです。
中村_シュタイナー学校の小学生低学年の頃って、本当に「ずっと遊んでるだけなの?」って感じじゃないですか(笑)。4、5年生になると、なかには「こんなに勉強をしなくてもいいのだろうか?」みたいな気持ちになる人もいるみたい。「こんなに漢字書けなくていいの?」みたいに。それもあってなのか、中3の長女は今めちゃくちゃ勉強するんですよね。私から「勉強をしなさい」とは言わないんですけど、学校から出た課題を黙々とやってます。やっぱり、小さい頃に学んだけど頭では忘れていることも、身体に蓄積されて、すべてが繋がって今発揮され始めてる感じがありますね。そう思うと、社会って子どもに対して今の成果を求めすぎなんだと思います。「今できるように」みたいな。そうじゃなくて、もっと長い目で信じてみて、出てくるものを信じて待ってたら、その子の力ってもっと伸びて引き出されていくのかなって思います。今の成果や今の結果を社会全体も求めすぎてると思うし、先が長いものを信じたり待つということが全体的に足りてないのかもしれないです。
haru._そうですね。すごくしっくりきます。確かに私も小学校時代は学校でも遊んでばかりでしたけど、高校に入って一番勉強しました。でも全然苦ではなかったんですよね。
中村_子どもたちを見ていても、苦じゃなさそうなのがすごいなと思っています。
haru._遊びきるみたいなことってすごく大事なのかもしれないですね。
中村_学びも遊びの延長というか。学ぶことが楽しいっていう気持ちがあるのとないのとじゃ全然違うじゃないですか。社会人になっても、自分のやりたいことをやりたいようにやっていくためには学び続けるしかないんですよね。学ぶということは、課せられて結果を出すためのものではなくて、なりたい自分にさせてくれるためのものだと思うと、学びは楽しいものなはず。私も子どもたちの姿を見て、学び続けたいなって本当に思います。
haru._暁野さんの変わっていくことへのポジティブな気持ちや、ワクワクする気持ちでそれを迎え入れられるものなんだっていうことを暁野さんのお話しや活動で感じられて、とっても勇気が出ました。
それでは今週も、いってらっしゃい。
ゲストの中村暁野さんが店主を務める藤野駅前にある暮らしを照らすエシカルショップ
*②パーマカルチャー
自然の仕組みをお手本にして、人と環境が無理なく共に生き続けられる暮らしや社会をデザインする考え方。農業だけでなく、住まい、食、エネルギー、人間関係まで含め、長く循環する仕組みを大切にしている
*③『パーマカルチャーセンタージャパン』
神奈川県相模原市緑区藤野にある日本のパーマカルチャー教育・実践拠点。1996年に設立され、日本の気候・文化に合った持続可能な農や暮らしの方法を学べる講座やワークショップを定期開催している
*④シュタイナー教育
ルドルフ・シュタイナーが提唱した、子どもの個性を尊重し、意志・感情・思考のバランスの取れた成長を目指す芸術的な教育理念
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Profile
中村暁野
文筆家・小商店主
家族と共に2017年より東京から少し離れた里山に暮らす。
一つの家族を一年間に渡って取材して、一冊丸ごと一家族を取り上げる雑誌「家族と一年誌 家族」を自身の家族と共に2015年創刊。以後、さまざまな媒体で家族や暮らしをテーマに執筆活動を開始する。
2021年、5年間自身と家族のことを毎日綴り続けた日記をもとに『家族カレンダー』(アノニマ・スタジオ)を上梓。
「家族」という最小単位の社会から、この大きな世界の問題を考え続けていく。