公園でキャッチボールをする朝 haru.×玉置周啓【前編】
月曜、朝のさかだち
『月曜、朝のさかだち』は第3シーズンに突入です。さらにゆっくりと対話を味わいながら、素敵なゲストのみなさんとより深く、テーマを掘り下げていきます。新シーズン初回のゲストは、4人組バンドMONO NO AWARE*①、アコースティックユニットMIZ*②のギターボーカルの玉置 周啓さんをお迎えしています。
『ORBIS IS』のシーズン特集テーマは「大人のともだち」。この特集では、広い意味での友達を手がかりに、人生に寄り添う関係性の変化とそのなかで見つかる誰かといることの心地良さについて改めて考えていけたらなと思っています。

そんな今回の朝活は、公園でキャッチボールをしました。桜が満開に咲くなか、グローブとボールを持ち早速キャッチボール!と思いきや、グローブの付け方からharu.さんは玉置さんに教えてもらいます。学生時代はずっと野球をやってきた玉置さんがharu.さんをリードしながらキャッチボール開幕。

「フォームは?」とharu.さんが尋ねると、「ノリでいいんじゃない?」と玉置さん。早速ボールを投げてみると、意外と上手なharu.さんに思わず玉置さんも笑ってしまいます。ノリで始めたものの、どんどん上達するharu.さんを見て、「投げるときに肘に違和感ない?」「今の投げ方の延長線上に正解があるよ!」と、玉置さんの指導も次第に熱が入っていきます。
すると玉置さんはharu.さんの投球フォームを見て、あることを思い出します。「ボールの持ち方を教えてなかった(笑)」。

「投げる前にボールの持ち方を確認しながら、「私は大丈夫」と一息つく時間を作るといいよ」という玉置さんのアドバイスを受けると、haru.さんは更に上達し、スタッフが声をかけるまで永遠にキャッチボールを続けていました。

朝活を終えた2人は、朝活を振り返りながら、2人の緩やかな関係性、バンドメンバーであり同郷の友達に感じていた思いの変化、自分の些細な感情に気づくためのバンドというあり方についてなどお話しいただきました。
本編へ進む前に、まずは視聴者さん、読者さんから集めた「ゲストに聞いてみたいこと」にお答えいただきました。今後も『月曜、朝のさかだち』に遊びに来てくれるゲストのみなさんに聞いてみたいことを募集しているので、ぜひORBIS ISのSNSをチェックしてみてくださいね!

玉置周啓 さんに聞きたいコト
Q.生まれ育った八丈島で、記憶に残っている景色はどんなものですか?
A.多すぎて言えないですが、ゲートボール場の年寄りたちが構ってくれて嬉しかったです。
Q.2026年、ご自身のともだちにお薦めしたいミュージシャンがいたら教えてください。
A.Noridogam
https://open.spotify.com/intl-ja/artist/0wGPie2VhTjtwscQEqBhDe
Q. 長年の友人と活動を続けていくのは簡単なことではないと思いますが、特に心がけてきたことなどありますか?
A.俺は何も心がけていないので、向こうに聞いた方がいいかもです。

「私は大丈夫」そう言い聞かせて投げる球
haru._周啓さんとは長年の友達なので、玉置さんではなく、いつも通り周啓でいきますね。今日は朝活でキャッチボールをしましたね。
玉置周啓 (以下:玉置) _ めっちゃよかった。
haru._周啓から「キャッチボールをしよう」って言われたとき、ちょっと「美しすぎないかな?」って思って。この朝活はゲストと初めてのことに挑戦することで、同じ目線に立てておもしろいなと思っているんだけど、周啓は野球部できっと得意なことだからどうなんだろうなって思ってたの。
玉置_ただ単に野球部だったやつがキャッチボールしてるだけの写真になっちゃうもんね。
haru._そうそう。周啓にとっては得意なことだけど、私は初めてやるからいいかなと思って今日はやってみました。
玉置_それで言うと、俺はまず早起きが得意ではないから、その時点でシュールさは俺のなかではあった。「なんでこんな朝早くからキャッチボールしてるんだろう」って思ってる感じが新鮮だった。
haru._この収録のために早起きできるように整えてくれてたんだもんね(笑)。
玉置_1週間前から、9時に代々木公園に着ける時間に起きる特訓をしていたんですけど、2日前にあったライブの打ち上げで朝まで飲んでしまい、完全に逆転してしまいました(笑)。昨日も「起きれなかったらどうしよう」って怯えながら過ごしていました(笑)。
haru._間に合ってくれてありがとう。
玉置_こちらこそありがとうございます。いつもキャッチボールするときって、今日ほど距離を空けないんだよ。3メートルとかの距離でボールを投げながら近況を伝え合う感じで。でも、今日はスタートした時点で20メートル先にharu.がいた(笑)。
haru._普段は会話をしながらキャッチボールをしてるんだ!
玉置_メタファーとしての会話のキャッチボールってあるけど、事実上本当にボールを投げ渡しながら会話もしている感じ。
haru._私は初めてやったから、グローブのはめかたも、ボールの持ち方もわからなくて、全然喋ろうとしてなかった(笑)。
玉置_何かを習得しようとしてたよね。だから番組的にはいいことなんだろうなと思った。いつも通り俺がだべりながらキャッチボールしてても、俺的にも何の新鮮味もないから、俺も指導するモードだった。行きの電車でも、女子野球の指導方法とか見てきたんだよね。そもそも男性と女性で骨格や筋肉の付き方が違うから、多くの人が男女で投げ方違うなって思ったことあると思うんだけど、フォームが違うんだって。でも、おもしろいのがベトナムにはその違いがないらしい。そもそも、ベトナムでは「野球ってスポーツがあるらしい」ってくらい、浸透していないんだって(※近年では急速に普及が進んでおり、2020年にはベトナム野球ソフトボール連盟が設立されています)。
haru._私と同じレベル感の人がたくさんいるんだね。
玉置_ステレオタイプな感じで申し訳ないんだけど、「男は野球」みたいな空気すらないから、男性も女性もベトナム人は大体同じフォームで投げるって言うのを知恵袋でたまたま見た(笑)。だから俺たちも、テレビで男性のプロ野球選手のフォームとか動き方を見て真似してて、真似をするごとに様になっていくみたいなのがあるだけなんだなっていうのを今日電車に乗りながら思ってた。
haru._私もキャッチボールするとき、大谷を想像してた。
玉置_(笑)。でも一番伸びるタイプだと思う。
haru._ここで足を上げてたなとか。
玉置_そういうことね。「私は大谷」だって思っていたわけじゃなくて、大谷の映像をイメージしてたのね。
haru._そうそう。野球のイメージが少なすぎて、大谷を何となく想像しながらやってみたら、意外とできた。

玉置_表情が一番似てたかもしれない。
haru._本当? 周啓が投げ方を教えてくれたときに、「『私は大丈夫』って一回自分のなかで納得してからボールを投げて」って指導をしてくれて、それをやったら確かにエナジーが違ったんだよね。
玉置_ね!それが伝わっただけでも今日は御の字。あの「私は大丈夫」って思う時間って、おもしろい時間でもあるけど、野球部にいたときにもそういう時間があって。要は野球ってストップアンドゴーのスポーツだと思われていて、サッカーとかバスケに比べて静止してる時間も長いんだよね。「ピッチャー以外何もやってないじゃん」って言われるようなスポーツなんだけど、そんなことなくて。9人の選手がそれぞれ空気を纏っていて、それが一致するかどうかで勝負が決まるところがある。だから、チームプレーをうまくやるには、自分のリズムが確立していないといけない。フワフワやってる人ってエラーしちゃうんだよね。 うまくなってきたら、「私は大丈夫」っていちいちやらなくても、リズムで投げられるようになるんだけど、今日はきっといちいちやった方がいい球を投げれそうやなと思って言ってみた。
haru._めっちゃいいアドバイスだった。やっぱりアドレナリンも出てるから、流れでやっちゃいそうになるんだけど、そうすると良くないんだよね。
玉置_最初そんな感じだったよね。野生に還るというか、俺が誰かとか覚えてないんだろうなっていう感じのボールだった。
haru._そう。その瞬間は周啓とか関係なかった(笑)。
玉置_本当にそうだったんだ…ちょっとショックかも(笑)。
haru._次周啓に会うまでに練習しようと思ったんだけど、これって相手がいないとできないのかって思ったの。他の人と朝活をやった後は、自分で練習しようって思えるんだけど、キャッチボールって相手ありきで、一人じゃできないから、また誘うね。
玉置_誘ってほしい。確かに一人でキャッチボールやろうと思ったことないな。
haru._一人じゃ上手くなれないスポーツってこと?
玉置_接続してるかわからないけど、相手のフォームがだんだん自分に寄ってくる感じがすごくおもしろいんだよね。「ボールはこうやって握ってみよう」みたいなことを、正しいかも分かんないけど、俺言ってるの。野球って9人でやるんだけど、ピッチャーになりたい人ってめっちゃ多くて。そういう友達にアドバイスしながらキャッチボールすることも多いんだよね。さっきは近況報告しながらやってるって言ってたけど、途中から今日みたいに20メートルくらい離れて指導してるかもしれない。
さっき「2人じゃないとキャッチボールできない」って言ってたけど、キャッチボールって、3人でも4人でも、10人でもできる。お気に入りのスタジアムが近くにいくつかあるんだけど、そこにいると後からグローブ持った小学生が遊びに来て一人で壁当てとかしてるの。そういう子に声かけて3人でキャッチボールしたりしてる。
haru._今日もスペシャルゲストが乱入してたもんね。私たちが公園でキャッチボールしてたら、知り合いのスタイリストさんが息子さんと来て、息子さんがグローブ持ってたから周啓とキャッチボールしてて。息子さんめっちゃ嬉しそうだったよ。
玉置_ね!俺別にプロ野球選手でもないのにね。
haru._彼すごく輝いてたよ。
玉置_なんか俺久々に感動しちゃった。公園にはああいう子が来るんだよ。前に知らない子とキャッチボールをしたのが2ヶ月前とかだから、なんか春が来たなみたいな感じがしたよ。

「友達は関係性の維持それ自体を指す言葉」
haru._今回、「大人のともだち」っていうテーマだから、周啓を呼んだんですけど、私たちも友達かな?と思っていて。
玉置_疑問系怖いけど(笑)。
haru._私はそう思っていて。別に2人でめっちゃお喋りしたことがあるというわけでもないんだけど、お仕事で曲を作ってもらったり、そのなかで一緒に散歩をして喋ったり。あと、私のパートナーと周啓はPodcastをやってたりと、すごく不思議な距離感にずっといるんだよね。めっちゃ近いわけでもないし、でもすごく近くにいる存在みたいな感じ。私が寝るときに周啓がうちでPodcast録ってたりするじゃん。
玉置_そうね、ごめんね。
haru._全然いいんだよ(笑)。
玉置_「ふざけんなよー!」みたいな雑言が聞こえていたら悪いなって思いながらやってるから、haru.がいるときは俺いつも控えめにしてる。
haru._え!ごめんね、それは。私は全然気にしてない。なんなら寝てるもん。だから本当に気にしないで。
玉置_あ、オッケー。
haru._だから、なんか親戚みたいな感じなんだよね。
玉置_家に来る頻度とかも含めてね。
haru._そうそう。いつも気にかけてはいるみたいな。
玉置_おお、ありがとう。確かに、関係性としては珍しいかもね。
haru._私からすると、なんでも共有するとか、なんでも喋ることが友達っていうことでもなくて。でも、私はものづくりを一緒にすることが、自分が求めてる人との繋がりで、一番好きな繋がりなんだよね。一緒に何かを作ることも何度かしてるから、距離は近くに思ってる。
玉置_それは一緒かも。haru.と普通に喋ったのって、散歩したとき?
haru._曲を作ってもらうときにした散歩じゃないかな?
玉置_そうかも。じゃあ俺が気づいてなかっただけで、あの時はもうものづくりの一環だったんだ(笑)。
haru._気づいてなかったっけ?たぶんコロナ前とかだったよね。
玉置_ジャングルジムがある公園に行った気がする。その一回きりだよね。
haru._そうだよね。
玉置_でも確かに友達っていう感じあるよね。俺も本当はものづくりで人と繋がるのって羨ましいと思ってる。
haru._でも普段そうでしょ?周啓にとって友達ってどういう感じ?
玉置_えー…。悩んでいい?友達か…。結構核の部分だから、話として早いかもしれないんだけど、友達は誰がどうかっていう話じゃなくて、関係性の維持それ自体を指す言葉だと思っていて。仲の良さとかで判断されないんじゃないかなって思ってる。この人と前回会ったときに、どんな話をしたかを含めて、お互いの関係値をお互いが自覚できてる状況というか。そういうことをしたいって思える人がみんな友達って感じなんだよな。なんか嘘言ってる気がする…。
haru._(笑)。でもさ、すごく不思議なのが、一緒にものづくりしてるマガジンのメンバーと話してる時の私には嘘がないなってすごく思うの。メンバー単体になると、それぞれとの関係性があって、緊張感もそれぞれ違って、すごく難しい塩梅だなって思うときがある。
玉置_確かにそうだね。だからやっぱり誰かを指す言葉って、そこに見えない線があって、そのかたちとか色とかがそれぞれ違う感じがすごくある。バンドメンバーもそう。4人でいるときがその原子が一番安定してるなって思う。
haru._分かる。そうなんだよね。そう考えると、そのメンバーのなかの一人とのバランスがちょっと傾いていたとしても、みんなが集まることで均されたりするから不思議だなって思う。
玉置_それこそ、最近Podcastを舞台にした漫画で、『We are connected』*③っていうシスターフッドを描いた漫画があって。菜緒都*④さんっていう方がトーチコミックス*⑤から出しているんだけど、それがすごく関係性みたいなことをよく描いてる。4人でいるんだけど、目配せのシーンがめっちゃ多くて、結構面白かったから今度貸すわ。昨日読んでて、haru.を思い出した。

友達への独占欲からの解放と許し
haru._周啓はバンドMONO NO AWAREとアコースティックユニットMIZをやられているんですけど、初めて音楽を聴いたとき、その二つが全然違う音楽でびっくりした。MONO NO AWAREはめっちゃ東京って感じだし、MIZはどこかわからないけど、世界のどこで聴いても馴染みそうな音楽というか。
玉置_それ嬉しい!
haru._どっちの面も持っている人なんだなってすごく思った。どっちもすごく好き。めっちゃいいと思う!こういう場がないとあんまり言うこともないんだけど、本当に素敵な音楽をやっている人です。
玉置_ありがとう。素敵な活動をしているharu.に言われると嬉しい。
haru._バンドにもユニットにも加藤成順*⑥がいるじゃん。
玉置_俺の地元の同級生ね。八丈島から出てきた2人が、MONO NO AWAREのメンバーのうちの2人だし、MIZの2人です。
haru._同じ場所出身で、今こうして東京に来て、MIZはいろんな国で音楽を作ったりもしてるじゃん?成順との関係性ってどんな感じなのかすごく気になってた。ずっと一緒にいるわけで、関係性ってどんなふうに変化していったのか一度聞いてみたいなと思ってた。
玉置_成順とは高校生から一緒で、大学は違うんだけど、大学生の頃からバンドを始めたの。確かに、週に2、3回は必ず会うのが15年続いてる。
haru._すごいよね。
玉置_すごいことだと思う。
haru._今周啓の年齢は?
玉置_今年33歳になる歳。
haru._人生の半分くらいはずっと一緒ってことだもんね。
玉置_すごいんだけど、さっきharu.が言ってた関係性に近いかもしれない。ずっと一緒にいるから仲良しで、なんでも認め合う仲間っていう空気感というよりも、本当にバンドのとき以外会わないんだよね。それが結構俺はおもしろいと思っていて。たぶん大学卒業して2年ぐらいは音楽を作る時間以外も遊んでたの。成順の家に行って2人でアコギを弾いてたら曲ができた延長でMIZを始めたっていうのもあるし。お酒飲みに行くときには大体セットで行ってたんだけど、だんだん成順は新宿方面に友達が増えて、俺は下北沢方面の友達が増えていったんだよね。
haru._コミュニティのエリアが分かれてるんだ。
玉置_そうそう。だから隣町の友達みたいな感覚になってきてて。でも、一昨年ぐらいまではその寂しさに打ち砕かれそうになるときもあったんだよね。「島から一緒」っていうのはメディアとか、こういう世界では物語として成立してるけど、「最近遊んでないな」みたいな。でも、お互いに誘わなきゃっていうふうにも思ってないし、お互いの人生はそれでもしっかり回ってる。バンドのときだけ会う感じが寂しくて、もう取り返しのつかないことになっちゃったんだなって思うぐらいのことがあったんだよね。
haru._そこから今はまた気持ちの変化があったの?
玉置_そう。元々思ってたんだけど、「人間はある種自分の人生を演じきるのが仕事」っていう感覚を持っていて。寂しさを感じていたときは、俺もまだ子どもだったっていうか。自分が孤独を感じたときに、自分の観測範囲の外で成順に友達がいることが許せなかったの。成順が何をしていたのか自分が把握できていないのが辛くて、「じゃあ友達じゃないじゃん」みたいに思ってて。
haru._友達だから、どこで何をしてるか知っておきたいみたいな感じ?
玉置_そうそう。『BeReal』*⑦ってアプリもそういう感覚の表出だと思う。その気持ちがすごく分かるけど、30歳を超えてから、自分の知らないところで人の人生が進んでいることに、むしろ幸福を感じるようになってきて。それは、自分がお節介で水やりをしなくても勝手に大地は豊かになっていくんだっていう世界への信頼に直結しているんだよね。そう思えるようになってから、成順と遊ばなくなってきた自分を許せるようになった。友達って別に、会ったり情報を全部知ってることじゃないなって思うようになってきたかな。
haru._すごく大きな変化だね。じゃあ、バンドで集合してるときもあまり人生の話にならないの?
玉置_ならないね。MONO NO AWAREに関しては、友達の話に通ずるんだけど、目標がないんだよね。例えば、武道館ライブとか、セールスいくつとか、メジャーデビューとか、いろんな目標があると思うけど、たぶん4人の目標が揃うことって一生ないんだろうなって思う。
haru._メンバーそれぞれが目指すところはあるけど、それを話し合って合致させることはないっていう感じ?
玉置_そうだね。
haru._それはあえてそうしてるの?
玉置_いや、みんな性格が違うんだよね。広く言うと全員繊細で気遣い屋で、強気っていう、すごく難しい(笑)。みんなめちゃくちゃ強い意見はあるけど、誰も気を遣って言わないみたいなのが多いかも。だから、俺も気を遣われてるなってすぐ察知して気を遣うし、それもすぐバレてるんだろうなって思う。めちゃくちゃややこしい人間関係のなかで生きてて、でもそれを俺は結構面白がっちゃうんだよね。前に長さんがこの番組に出てる回で、4週目に「10年後におもしろいって思ってるだろうから、ミスも許せる」みたいな話にすごく共感して。目標って狂信的なものじゃないとダメだと思っていて。「これをしないと俺はダメなんだ」みたいな。それが家庭や学校から与えられたものや、自分の嫉妬心や強い憧れみたいなものから来てるならいいけど、たぶん4人ともあまりそういうのがないんだよね。 反発心とかもそんなにないし、そんな4人が立てた目標に向けて結束を固めようとするのはちょっと演技すぎるなって思う。だから、ただなんの目標もなく音楽を作って、いいライブをしようみたいな感じ。
haru._でも、ライブのときはめっちゃパッションを感じる。
玉置_嬉しいし、最近そうなってきた。前までは、発表会みたいなライブをしてたんだよね。音源をちゃんと再現しようみたいな。でも最近は、直接言うほど強気なスタンスを表出できない4人が、ライブをするときだけはそれぞれの身体をそれぞれで鳴らせる自由を得た感じがある。そのおかげでパッションが強いライブになってきたんだと思う。
haru._確かに、個がそれぞれそこにいるみたいな感じがする。
玉置_めっちゃ嬉しいし、そうなれてよかった。なんでそう思うかっていうと、俺バンドを始めた時点で辞めることを想定していて、だからMONO NO AWAREっていう名前にしてるんだけど。まあそんなに深く考えていたわけじゃないけど、「無常ですわな」みたいなノリでつけてて。そのときもせめて辞めるときは、4人がそれぞれ人間としてちゃんと成長した状態で終わりたいって思ってたんだよね。音楽ができればいいっていう気持ちもあるし、でもバンドを通して無茶苦茶でいいってことだけじゃなくて、過程で一緒に働いている人の顔がちゃんとよぎるようになってまともになっていく、言葉はよくないかもしれないけど、更生施設みたいになったらいいなって思ってる。別にみんながまともじゃなかったわけじゃないけどね(笑)。
haru._でもそれってめちゃくちゃ大事じゃない?「クリエイターとかアーティストだからこそ人としての成熟をしなくてもいい」みたいな、むしろそれが作風になってる人とかもいるじゃん。そういうのを見てて、なんかモヤモヤしちゃうんだよね。「そんなことが通用するわけねーだろ!」みたいなことをすごく思っちゃう。

玉置_なるほどね。この番組を聞いてる人は相当リテラシーが高いと思うからあれなんだけど、俺の場合はかなり真っ当で、その真っ当さに気づくっていう話かな。俺ってお酒の失敗が多くて、結構言い過ぎちゃうところがあるんだよね。友達のバンドと飲んでたんだけど、4時間くらい超アッパーな感じで過ごしてたんだけど、その後に肩肘付いて「俺さ…」って悩みを相談してくれたときに、「さっきまでアッパーで乾杯してた俺はどうしよう」みたいにアップアップしちゃって。真面目なトーンで喋るぞって切り替えようとすると、過剰に切り替えちゃって徹底的に話そうみたいな感じになっちゃうんだよね。暴言を吐くとかじゃないんだけど、「根本から間違ってるよ」みたいに言っちゃうところがあって。
それで次の日起きたときにすごく嫌な気持ちになることが多くて。絶対に「昨日は言い過ぎました。ごめんなさい」って連絡するんだけど、そういうことを毎回やっちゃう。そういうとこ俺って本当に情けないし、ダサいなって思うんだけど、最近はその質量が変わってきていて。謝るときに葛藤がなくなってきたんだよね。「言い過ぎたけど、そういうシチュエーションだったししょうがない。ちゃんと謝ろう!」みたいな。俺がそのシチュエーションに甘えていて、「そんなに甘くねえよ」って話なのだとしたら、どこかでちゃんと裁かれようみたいな気持ちになってる。前はもっと「俺は悪くない」って思うことが多かったんだけど、最近は素直に「めっちゃ俺が悪いな」って思うようになってきた。
haru._でもそれってシチュエーションが変われば受け取られ方も変わる話なんじゃない?周啓がそのバンド友達に対して、言い過ぎちゃうかもしれないけど、心からそう思って話してることではあるわけじゃん。それが朝に集合して最初からその相談をされて、同じようなことを言っていたとしたら、相手は「ありがとう」って思うかもしれないじゃん。
玉置_そうだね。だから謝ると大体は許してくれるというか、許すっていうことでもなかったよって言われる。でも、俺は申し訳ないって思っちゃってるから、礼儀として謝ってる。
haru._でも、普段抑えてるからこそ、放出しすぎちゃったって思うんだろうね。
玉置_「あのときも、このときも!」っていうふうに怒る人に対して「そのとき言ってよ」みたいなことってあるじゃん。俺もそうなってるのかなって思う(笑)。別で抑えてたものを、今間違ってアウトプットしちゃってないかなって不安になるけど、でも、基本音楽ってそうなんだよね。
この前、荘子it*⑧っていう友達と喋ってたときに思ったんだけど、荘子itは男子校育ちだからなのか、すごく男性的だなって感じる。優しいやつだけど闘争心もあるし偉そう(笑)。その話を荘子itにしたら、「俺は生まれながらにして偉そうだよ。そういうやつもいるんだよ」って言ってきて、すごいなこいつって思ったの。俺が自信なく育ってきた中高、こいつはどんだけ胸を張って生きてこれたんだろうって思うんだよね。でも、荘子itは映画業界と近くて、そのなかの暴力性のある話題を聞く度に自分の暴力性を自覚するらしいの。その暴力性自体はもうあるものだからしょうがないんだけど、問題は、それをどう抑えるかというよりも、どこに転嫁したらベストなのかを考えることだっていう話をしてて。
その話を聞いて俺も一緒だなって思ったんだよ。自分が生きてきたなかで自覚してなかったかもしれないレベルで受けてきた抑圧とか傷つきが、突然音楽っていうかたちで出てきちゃうことがある。よくアーティストが、曲が出来上がったときに「あの時本当はこう思っていたんだって気づいた」って言うけど、あれって格好つけて言ってるんじゃなくて、今日のキャッチボールみたいに、投げてみるまで自分が何を持ってるか気づかないみたいなことってあるんだなって思う。
話が戻っちゃうんだけど、それでいうとバンドは、バンドというフォームで球を投げていく。それをやっていくうちに、「俺たち4人はバンドにそれぞれ所属しているパーツだよね」って自覚するんだよね。それが暴力性の話じゃなかったとしても、自分はこれに傷ついていたんだなとか、こういうふうに人を傷つけたことがあるんだなとか、シンプルにお腹減ってたんだなみたいなことに気づいて転がっていきたいっていう感覚がコミュニティの総体に対して思うんだよね。
haru._そこに自覚的であるみたいなこと?
玉置_そう。それに自覚できるようになってきたのは、ここ最近だなって思う。それまでは技術的に成長していたとしても、人間としては正直しばらく止まっていたんじゃないかなって思う。見えないところで逆に伸びていたのかもしれないけど、それぐらいこの気づきは大きかった。「そうだ、成長したくてバンドを始めたんじゃん」って、この数年でいきなり思ったんだよね。
haru._へー!おもしろいね。MIZはまた違う感覚なの?
玉置_そうだね、あれはもうちょっと息抜きで始めたのもあって、もうちょっと人間性との再会みたいな感じ。さっき成順と実は最近そんなに遊んでないって話をしたけど、去年台湾にレコーディングしに行って、そのアルバムが4月8日に出るんだけど、そのレコーディングしてる時に、なんか「成順のことめっちゃ好きだな」って思って。遊んでないときに「あいつ何考えてるのかな?」みたいな余計な思考が全部吹っ飛んで、成順は何も考えてないってことが発覚した台湾だったんだよね(笑)。
haru._でも、出会い直す場所も大事だったりするよね。2人とも知らない場所で音楽を作るとか、その場所もすごく重要だなって。空間ってすごく文脈があるじゃん。「ここにいるあいつ」みたいな。
玉置_だから新宿と下北沢みたいな話になっていっちゃうんだよね。分かる。同じ八丈島出身なんだけど、土地性が一回漂白されて、「東京の自分」みたいになっちゃってるっていうのがでかいかもしれない。
haru._そう!その「東京の自分」みたいな話もめっちゃしたいので、記事の後編で話せたらいいなと思っています。
対談は後編に続きます。後編では、東京という場所で暮らすことで眼差される人間像、学生時代の2人が原宿に抱いていた夢、Podcastを通して同じ人と長い期間会話をすることで変化する関係性、依存先を分散させるという友達のあり方などについてたくさんお話しいただきました。
そちらも是非楽しみにしていてくださいね!
それでは今週も、いってらっしゃい。
2013年結成の4人組バンド。玉置周啓(Vo/Gt)、加藤成順(Gt)、竹田綾子(Ba)、柳澤豊(Dr)で構成。
*②MIZ
玉置周啓(Vo/Gt)と加藤成順(Gt)によるアコースティックユニット
*③『We are connected』
菜緒都による、就活を控える大学生の恵理・ゆう・春・葵の4人によるシスターフッドコミック(トーチコミックス出版)
*④菜緒都
1985年新潟県出身の漫画家。Podcast『たぶん僕が間違っている』のパーソナリティも務めている
*⑤トーチコミックス
リイド社が運営するWebコミック誌
*⑥加藤成順
バンドMONO NO AWAREのギター。ゲストの玉置さんとアコースティックユニットMIZも組んでいる
*⑦『Be Real』
1日1回ランダムな通知で前後カメラ同時撮影を促すSNS
*⑧荘子it
ヒップホップグループDos Monosのメンバーとして活動するラッパー/トラックメイカー
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Profile
玉置周啓
4人組バンドMONO NO AWARE、アコースティックユニットMIZのギターボーカル。作詞作曲をつとめながら、エッセイ等の執筆活動や漫画やイラスト等も手がける。人気Podcast『奇奇怪怪』やTBSラジオ『脳盗』のパーソナリティもつとめる。