公園でキャッチボールをする朝 haru.×玉置周啓【後編】
月曜、朝のさかだち
『月曜、朝のさかだち』シーズン3、初回のゲストは4人組バンドMONO NO AWARE*①、アコースティックユニットMIZ*②のギターボーカルの玉置 周啓さんをお迎えしています。
『ORBIS IS』のシーズン特集テーマは「大人のともだち」。この特集では、広い意味での友達を手がかりに、人生に寄り添う関係性の変化とそのなかで見つかる誰かといることの心地良さについて改めて考えていけたらなと思っています。
記事の前編では、朝活を振り返りながら、2人の緩やかな関係性、バンドメンバーであり同郷の友達に感じていた思いの変化、自分の些細な感情に気づくためのバンドというあり方についてなどお話しいただきました。

後編では、東京という場所で暮らすことで眼差される人間像、学生時代の2人が原宿に抱いていた夢、Podcastを通して同じ人と長い期間会話をすることで変化する関係性、依存先を分散させるという友達のあり方などについてお話しいただきました。
本編へ進む前に、まずは視聴者さん、読者さんから集めた「ゲストに聞いてみたいこと」にお答えいただきました。今後も『月曜、朝のさかだち』に遊びに来てくれるゲストのみなさんに聞いてみたいことを募集しているので、ぜひORBIS ISのSNSをチェックしてみてくださいね!

玉置周啓 さんに聞きたいコト
Q.長年の友人を見ていて「こういうところが変わらないな」と思うのはどんなところですか?
A.話せば分かる、というスタンスを大切にしている人が多いです。
Q.Podcastやラジオをたくさんやられていますが、この人とはつい喋りすぎてしまう、という相手はいますか?
A.オサケンタローとドミコのひかるくん、あとは島の友達です。
Q.尊敬できる友人はいますか? また、その人のどんなところを尊敬していますか?
A.います!自分のやりたかったことをずっと忘れてない。
Q.長年一緒にいると「この人はこういう人だよね」、とわかった気になってしまうことが多々あります。玉置さんが友人から抱かれているであろうイメージで、覆したいと思うことはありますか?
A.お酒を長く飲めると思われていることです。
Q.こんな友達がいたらよかった、と思う映画のキャラクターはいますか?
A.『プロジェクト・ヘイル・メアリー』のロッキー

代わりに魂を解放し合う関係性
haru._MIZはいろんな場所でアルバムを作ってるけど、それがめっちゃいいなって思ってる。私は10年前に東京に帰ってきてマガジンを作り始めたんだけど、受け取る人たちやメディアでの紹介のされ方が「東京のインディペンデント誌」みたいな感じだったの。
玉置周啓 (以下:玉置) _ 要は「イケてる」みたいな空気もはらみつつだよね。
haru.__ニューヨークとかに並ぶ都市みたいな。
玉置_やっぱそういうことだよね。
haru._ロンドン、パリ、東京でしょ(笑)?
玉置_なんで外側からの目線のニュアンスなの(笑)。
haru._そういうふうに見られながら10年やってきて、そういうのが窮屈で、「うるさい」って思っちゃう瞬間があるの。東京という街にいる自分とか、東京で作ってるものとか、その周りにいる人たちみたいに見られることに「うるさ!」って思っちゃうみたいな。
玉置_わかるわかる!「放っといてくれ!」って思うよね。
haru._そうそう。だから周啓がたまにMIZの制作でいろんな場所に行ってるのを見ていいなあっていう気持ちになるし、それで周啓が解放されてるのを見ることで自分も癒されるみたいなことがある。私の代わりに魂を解放しに行ってくれてありがとうって。
玉置_それすごいわ。でもすごいその感覚わかる。自分じゃなくても、近い誰かがそれを味わっているのを見ることで、その友達が依り代になるというか。自分の魂も部分的に解放されたかのような感覚になるよね。
haru._そうそう!
玉置_わかるわ。MIZに大義をあまり感じずにやってたから、そう聞くといい活動だなって思える。
haru._それがいいんじゃない?
玉置_自覚しすぎなくてもいいのか。エンジニアの奥田さんって人がいて、その人がいきなり「場所で音って変わるんだよ」って言ってきて。「寒いところで録ったら寒い音になるし、暖かいところで録ったら暖かくなるし、湿度もあるんだよ」って言われて、なるほどと思ったの。奥田さんは自分の原チャリが盗まれたときも、一瞬原チャリがあった場所を見て、警察にも連絡せずにすぐさま真顔でタクシーを止めて帰ったっていう人で。そういうスタンスをとる人というか、何事もなかったかのように、その日からただタクシー移動になっただけみたいな人なの。
haru._ちょっと感覚はわかるかもしれない。
玉置_そこで事件にしないフラットさが好きで、その人が言うんだから、当たり前にその土地に行ってただ録っただけっていう感じでできそうだなと思って始めて、それが定番化したんだよね。
でも、北海道に行ったときにちょっとミスっちゃったの。俺がちょっと欲をかいちゃったり、TaiTan*③の影響を受けて、賢く考えればもっと効率よくできるはずみたいな脳になっちゃったことがあって。その頃、俺がやたらと友達の特性をコピーしてる時期だったんだよね。TaiTanのその脳の使い方は、彼の職業特性なんだってことに気づかないでやっちゃって。俺がそのときやったのは、東京から北海道までキャンピングカーで行って、その間もビデオを回し続ければミュージックビデオをわざわざ撮らなくてもいいっていうことを考えたの。でも結果、ずっと寝不足で地獄のレコーディングになっちゃった。氷点下なのにテントに泊まって、寒さで朝起きるみたいな。そのときに成順*④と「狙いすぎたね」って話してた。そのときにスキームっぽくしちゃいけないんだって思ったし、「ただ行って、何かが起きたらラッキーだし、起きなくても別にいいって言うスタンスでやりたいね」って話をして、台湾に行ったんだよね。そしたら本当に何も起きなかった。ただ生活しただけで、おもしろ事件もなく、ただ漁師と一緒に毎日海を見て、ただ健康的な生活をしただけ。それこそ朝活って感じ。
haru._いいね。それで台湾の音になった?行ってよかったなって思った?
玉置_そうだね。前のアルバムを北海道で録ったんだけど、そのときよりもリラックス感があるなって思うし、環境音も入ってるから、台湾にしかいない鳥の声とかもたまに聞こえていいと思う。
haru._いいね、楽しみ!
玉置_是非聞いてみてください。『轉角民宿(てんかくみんしゅく)』。

東京と地方での暮らしの違い
それでも「原宿は世界」
haru._東京にいるからなのか、全てがコンテンツになり得るみたいなことを言われたりするじゃん。「ビデオを回しておけばそれで1エピソードできるじゃん」とか(笑)。言ってることはわかるんだけど、でも無理じゃない?って思う。テンション保てないし、そのときのビジュが嫌だとか、細かいことがあるじゃん。あとは、「あの人とあの人は知り合いで、今こんなプロジェクトをしてて」とか「この間出したあれがどれくらい話題になった」とか、そういうのが本当に疲れたっていうか、なんかうるさいの(笑)。
玉置_わかる。待って、わかりすぎか。何回も「わかる」って言ってる気がするけど、本当ノイジーだよね。一個だけだったらそういう話を聞いてもいいけど、四方八方にあるから。でも俺、それはやっぱり土地性の問題だと思ってて。東京ってやっぱりバーチャル空間なんだよね。俺が八丈島という田舎から出てきた実感としては、八丈にいるときはフットの友達関係があったわけ。要は、気が合っても合わなくても、同じ土地の出身で、親も友達で、「そこの水道管の工事してるらしいよ」みたいな共通の話題が地理的な関係に束縛されてる。それが嫌で東京に出てくるわけじゃん。
でも、そういう関係値が心地いい人もいるんだよね。自分の生まれ育った土地にでっかいお店とかがあって、そこに土日に行くみたいな流れ自体が楽しいみたいな。東京にいる人たちはそういうループから抜け出せないということに、「きっとその人たちは苦しんでいるはずだ」っていう物語を付与するけど、そんなことないと思うんだよね。
俺の親も八丈っていう、ある意味めちゃくちゃ退屈なところで海を見ながら毎日過ごしてきたしなって思う。でも、東京に来るとそういうフット感がないんだよね。当たり前なんだけど、俺の場合は最初東京に友達がいなかったから、まるっきり違う人たちと一から関係を構築しなくちゃいけなかった。八丈出身の先輩が『CHOKiCHOKi』に載ったことがあって、その人の名前を原宿で出したらどうにかなるかもみたいな淡い期待しかなかった(笑)。
haru._旅人すぎ(笑)。
玉置_「原宿という街があると聞きました」みたいな感じ(笑)。俺2万のヤンキースの帽子を竹下通りにいるアフリカ系の人に買わされそうになって、駅まで逃げたことあるもん(笑)。うわ!それ懐かしい!ちょっとその話したいんだけど、俺原宿には竹下通りしかないと思ってたの!
haru._原宿といえば竹下通りっていうイメージね。でも、私もそうだったよ。お父さんに「原宿には竹下通りっていう道があって、そこにはいろんなものが世界中からあつまっている。その通りを行け!」って言われた(笑)。
玉置_ナウシカのパパじゃん(笑)!めっちゃいいね!威厳あるな父。
「竹下通り」って字しか読めないくらいの感じで行った。当時野球部上がりだから、まだ坊主のちょい伸びくらいの髪にジャージみたいなのを着てて。当時はそれがもさいことにも気づいてなかったんだよね。東京に出たてのときって、自分が浮いてることさえわからなかったんだよね。そのまま歩いてたら、背の高いアフリカ系のお兄さんが同じようなジャージを着てて、「Hey, baseball boy」って俺に言ってきたの。それでハイタッチしたらめちゃくちゃ強い力で手を掴まれて、そのまま地下のお店に連れてかれて(笑)。紳士なんだけど、手は結構強くて。それでお店に入ると、真っ白い壁に一個だけニューヨークヤンキースの帽子が展示みたいにかかってて、それを指さして「2万5千円!」って言われてさ。高校3年生がそんなお金持ってるわけないから、「ヤバい」と思って、電話してるふりして「友達がいるから」って言って地上に出たの。そしたら別のアフリカ系のお兄さんが立ってて「こっちだよ」って言うから、そっちなんだと思ってついていっちゃったの(笑)。
haru._いいカモすぎるね(笑)。
玉置_連れて行かれたお店には、キューピッドが二つ胸のところに印刷されてる紫色のTシャツがあって、「4千円」って言われて「安い!」と思って買った(笑)。
haru._完全にその流れができてるんだろうね。
玉置_それに気づくのは遥か後のこと。そのあとに、当時名前だけ知ってた古着屋の『KINJI』に行って、そこで坊主がハット、白シャツ、黒ベスト、黒スラックス、黒の革靴を買った。
haru._何系なのそれ(笑)?
玉置_服の様式を制服しか知らないから、シャツスタイルしかわからなかったんだよね。だから高校の制服とほとんど同じシルエットで、てかマジシャンみたいになった(笑)。
haru._でもね、私も人のこと笑えないの。私もお父さんに竹下通りは世界だって言われてたから、初めて行ったときに、その頃は雑誌で見てる世界でしかファッションを知らないから、入ったお店で宇宙柄のトップスといろんな動物が連なったチェーンのネックレスを(笑)。
玉置_なんだよそれ(笑)。世界すぎるだろ!トルコのバザールみたいなチョイスしてるじゃん(笑)。
haru._そう(笑)。宇宙に行っちゃった(笑)。
玉置_猫ミームが流行る遥か前にやってたんだ。ギャラクシーバックの猫、今流行ってるもんね。
haru._それもう結構前に終わったんじゃない。
玉置_そうなの?じゃあちょっと恥ずかしいわ。
haru._でも当時中学生の私は、そのわけのわからない服を埼玉の超田舎で着てた(笑)。
玉置_埼玉でその宇宙柄のトップスと動物ネックレスつけて歩いてたら、結構ヤバいかもしれない(笑)。
haru._あったよねそういうこと。なのに、今自分が「東京です」みたいな顔してるのとかも意味不明だなって思う。
玉置_でもそれって気概がおさまったっていうことなのかな。
haru._どういう感じなんだろう。
玉置_でもさっき、俺が台湾に行ってると代わりに魂を解放してくれてるって言ってくれたけど、俺はharu.の活動は、俺の失いたくない魂を未だ保管してくれてる感じがある。
haru._その自負はある。
玉置_それはharu.がやってる仕事が全部潔癖に回ってるとも思わないし、いろんな仕事をしながらも葛藤しないことはないんだろうなって思う。それはよくない仕事をしているっていう意味じゃなくて、仕事面というよりは、出会った人たちとできるだけシンプルにフラットなスタンスで付き合いたいって思っているんだろうなって。
haru._勝手に私はみんなの私人性を保ってると思ってる。周啓にもだし、TaiTanにもなんだけど、TaiTanは戦略の人だから、一生戦略について考えてるの。でも、本当は私人なの。私はそんな側面をいつでも出せる装置だと思ってる。
玉置_構造上ね。装置っていうと怖いけど、俺も装置っていう言葉の使い方は好き。俺もTaiTanの好きなところって私人なところで、こいつ可愛いなって思うから一緒にPodcastを初めたの。でも、だんだん評価されるところが別軸だったりするから、それであいつも苦しむことがあるんだろうなって思う。てか、30歳を超えるとそういうの多い。
haru._やっぱりそうだよね。

長く一緒に過ごしていなくても
信頼することはできる
haru._周啓はPodcast『奇奇怪怪』*⑤、TBSラジオ『脳盗』*⑥のパーソナリティもされてますけど、もう何年目?
玉置_この前5周年だったから、今年6年目だね。
haru._すごいね。
玉置_最初の2人のプロフィール写真をharu.が撮ってくれたんだよね。
haru._そうだね。この二つの番組のパーソナリティを周啓とTaiTanがやってるんですけど、TaiTanは私のパートナーなんです。2人が番組を始めたあととかに結婚したのかな。
玉置_そこスッゲー適当じゃん(笑)。
haru._(笑)。当時2人が番組をやってて、その記念の撮影とか、プロフィール写真を撮らせてもらってたんですけど、いつの間にか番組も人気になって。
玉置_そうだね。すごいことです。
haru._この番組もそうだけど、『take me high(er)』*⑦っていうPodcastも、一緒にマガジンを作ってるmiyaと一緒にずっとやってて。今年で4年目。1人の人とずっといろんな話をするって結構特殊な関係性だなと思ってて。本当にいろんな話をするの。周啓とTaiTanがどうかはわからないけど、人生のことも仕事のことも、悩んでることも自意識の話とか超するの。それで自分のことを知ったり、相手のことを知ったり、こういうトピックにはこういう反応をするんだなとか。普通に話してたらあまり見えてこないようなところまで知れちゃう、すごく不思議な関係性だなと思ってて。それを周啓もずっとやってるわけじゃん?同じ人と対話を続けることで何か発見ってあった?
玉置_記事の前編で、「友達ってある人との関係性を維持しようとお互いが頑張る試みそれ自体」みたいなことを言ったと思うんだけど、それに気づいたのはTaiTanと喋ってるときなんだよね。TaiTanと俺って、そもそも分野が全然違うというか、クラスが同じでも友達になってなさそうな感じがあるの。
haru._そうだね。番組を始めた初期とかそんな感じがする。周啓はTaiTanが好きな人だなって思った。
玉置_へー。ラッキー♫
haru._私はTaiTanよりも、周啓に人間のタイプとして近いものを感じてるの。
玉置_さっきも、haru.がTaiTanにとってどういう装置かって話をしてたけど、すごい共感できて。お互いの自我が溢れすぎたら、装置として振る舞えないこともあるわけじゃん。俺って嫉妬とかしないと思ってたし、実際に嫉妬とかしたことなかったの。「どうにでもなるか」みたいな感じで、何かに没頭するのってものを作るときだけで、人生のことで必死になることってないと思ってたんだよね。古典でも必死な人から没落していくじゃん。『火の鳥』*⑧も不死を願った結果死んでしまうしさ。だからあまりそういうことを気にしないで生きていけるのが自分の魅力だって思ってたんだけど、TaiTanと喋れば喋るほど外圧がかかっていったの。
本人は嫌がるかもしれないけど、男社会の実力を発揮して生き残らなければいけないっていう勝負の仕方をしてて。もちろん男社会が全部がそうだとは思わないけど、ある程度気合いが入っていないと生き残れないのも確かなんだよね。そういうリアリティをたぶんTaiTanは知ってるんだろうなっていうのを感じるから、時折怖いんだよね。賢すぎるし、人のことが見えすぎてるなって思うときがある。さっき話した、北海道収録時にいろいろ詰め込んで、一石四鳥みたいなことをして結果めっちゃ体調崩すみたいな時期があったから、それを経て、どうやったらTaiTanにコンプレックスを感じずに対等に喋れるんだろうっていうのをめっちゃ模索してたんだけど、結論、あいつの目を見るってことだったの。目を見たら全部解決した。
haru._へえ!でもさ、目を見られるの弱いよね。
玉置_弱い。だからTaiTanは俺のこと見ないし。
haru._そうだよね。私も自分の欲求を通すときはめっちゃ目を見るもん。
玉置_確かに、それに似てるのかな。「意思があるんだ」っていうのを伝えているのかも。
haru._私は覇気というか、大きな声を出すみたいな感じで目を見てる。
玉置_めっちゃ想像つくわ。TaiTanもある意味男感がちゃんとあるから。あー、これ難しいな、本人がいないのに言うの悪いなって思っちゃう。
haru._そうだね。でもそこすごく意識してて、口癖のように「今怖かったかな?」って聞いてくるの。タクシーに乗った後とか、お店に行った後とかに、「今店員さん怖がってたよね?」って聞かれる。
玉置_可愛いじゃん(笑)。
haru._自分が与えてしまう圧に自覚的にいなきゃいけないってたぶんすごく思っていて。特に最近なんだけど、急に反省したり頭を抱えたりしてる。
玉置_そっか、でも素敵だなその感じ。その感じに気づいてはいたけど、Podcastで一緒に喋るっていうのは、半分仕事のときだからちょっと張り詰めたものがあるときも多くて。特に仕事が忙しいときとか、Podcastでは自然体で録ってるつもりなのに、どう考えても自然体じゃねえだろって思うぐらい張り詰めてるときとかって、『奇奇怪怪』のアーカイブに残ってると思うんだよね。
haru._音声ってそういうの分かっちゃうよね。
玉置_俺、「体調大丈夫ですか?」って心配される期間は半年以上あって。ライブに来てくれた人から「Podcast聴いてます!体調大丈夫ですか?」みたいな。「ライブ元気だったじゃん!」って思うんだけど、たぶんPodcastの声がよっぽど暗かったんだろうなって思う。そのときになんで最近こんなに暗くなっちゃうんだろうっていうのを考えてみたら、目を見てないからだって思ったの。目を見てないと、TaiTanが冗談を言ったのか、本気でそれを言ったのかの見分けもつかない。どの方向に話を持っていきたいのかとか、身体のリズムや揺れ感がなく喋ることになっちゃう。
それと、TaiTanからしたら、聞き手である俺がずっと自分を見ずに壁の方を見てるって、不機嫌そうに見えて辛いだろうなって思ったの。どれだけ俺が体調が悪そうでも、TaiTanがたまに俺の目を見たときに、いつでも目が合うってだけですごくいいかなと思って、目を見ることを意識するようになった。そこからすごく調子が良くなったんだよね。
haru._よかった。収録場所の構造的に壁向きに収録してるんだよね。
玉置_そうなんだよね。昔は、「ドライブしてるときとか川原に座ってるとき、散歩をしてるときも同じ方向を見て喋ってるからいいんじゃない」って言ってたんだけど、同じ方向を見てると、今相手がどうなのかってことがわからなくなる。
haru._そうだね。しかもドライブとか散歩してる時って景色がどんどん変わっていくから、別に一点を見つめてるわけじゃないよね。だから今の収録環境は強制的に同じものを見ることになるというか。
玉置_すごい!まじで大発見だわ!じゃあ収録するときにiPadとかで海の映像とかを流しながら2人で横並びに喋ったら結構いいかもしれないね。
haru._ちょっと変化がありそうだね。私ジムでいつも世界のいろんなところの映像を流してる。
玉置_いいね。宇宙柄のTシャツと似てるね(笑)。
haru._そうかも。意識を外に飛ばすっていう話ではめっちゃあると思う。宇宙は飛ばしすぎだけど(笑)。
玉置_目を見るっていう単純な操作一つで結構解決しちゃったぐらいに今は思えてて。TaiTanが苦しそうにしてたら助けてあげようっていう気持ちにもなるし、それが負担にも感じない。TaiTanも俺に外圧を与えようなんて思ってなくて、なのに勝手に感じてたことが問題で。もともと俺は甘栗むいちゃいましたくらいで曲ができてたのに、「目標立てなきゃ」とか「でも目標を立てたら絶対バンドごと倒れるぞ」とか、そういうことをいろいろ考えてぐるぐるしてたんだよね。でも結果的に、俺がTaiTanの好きなところってそこじゃなくて、適宜優しくて、いいやつで、趣味も合う。生きていくうえでいろんな姿形を持つ必要があって、きっと今のあいつはそういうモードなんだろうなって思えるようになったんだよね。そこから私人に近い状態をお互いが解放し合えるような状態になったらいいなと思ってるし、最近は楽しくなってきた。俺はおもしろいかどうかとかも気にしてないし、今やっと友達関係としてすごくいい状態になったなって思う。

haru._そうだね。でも本当に、私が自由にいろんなことを感じたり、自由に作ったりすることを一番尊重してくれる人だったっていうのを良く思い出す。だから自分に対して、「そこを信頼しなさい」って思う。
玉置_俺も一緒。俺のおもしろさがいくつかあったとして、その大部分をTaiTanは理解してくれてるなって思う。
haru._しかも彼はうちらのそういうところが好きじゃん。
玉置_そうだね。でも今、成順もそうだけど、長く付き合ってる人と「こういう関係性でいいんだ」って思えるようになって、そしたらお互い楽だなって思うことが最近増えた。
haru._1人の人に全部背負わせなくていいというか、いろんなところでいろんな感情を分散させていいんだろうなってすごく思う。
玉置_確かにね。そっちの方が人間は健康だって言うよね。依存先が多い方がいいとかね。だからTaiTanと喋ってるときって、こんな感じで喋らないもん。キャッチボールと一緒で、話し相手に触発されるんだよね。人によって態度が変わるから、中学生の頃「八方美人だ」ってすごい嫌われてたんだよね。「俺は俺」みたいなスタンスが苦手というか、ずっとそれじゃなくてもいいじゃんって。自我が出るのって音楽作ってるときだけ。それ以外のときは結構どうだっていいというか。話がちょっとズレちゃったけど、1人の親友に全てを吐き出すみたいなことをしなくても、ある分野における悩みや喜びを話すならこの人だなみたいな感じで結構分けてるかも。1、2回しか会ったことない姫路のラッパーに最近相談のDMしたんだよね。それはXで「脳死でライブのチケット買っちゃった」って呟いてる人がいて、そこに対して「ライブは脳死で楽しむものだよ」って俺が呟いたの。そしたら2件、「実際にそういう状態になってる人もいるのに、楽しいものに対してその言葉を使うのはいかがなものか」っていう意見が届いて。「確かに」と思ったし、でもなかったことにしたくないから消したくもなくて。これについて誰に相談しようと思ったときに、TaiTanでも成順でもなく、2回しか会ったことない姫路のラッパーが「言葉の使い方」っていう1点のみで繋がったんだよね。「こういう言葉の使い方についてどう思う?」って聞いたときに、「なんでもよくね?」とかじゃなくて、真摯な意見が来そうっていう信頼があったの。そのときに、俺って2回しか会ったことない人にでも相談とかできちゃうんだと思って、結構自分にびっくりしたんだよね。
haru._ずっと封印していたことなのに、「今この人に話していいと思えたんだ自分」みたいなこともあるよね。私は周啓にそう感じることがある。前に『ようこそはるばる』っていう曲をMIZに作ってもらったんだけど、その時にいろいろ周啓にテキストを送ったじゃん。大事な人とのお別れの話をしたんだけど、なぜか話した方がいいなって思ったんだよね。
玉置_そういうふうに言ってたね。不思議だったのは、面食らわなかったというか、結構自然なことだった。そのときって、俺もharu.もたぶん1回しかまともに会ったことないのに、かなりプライベートな話をしてくれて、でも「どう返信しよう」みたいにあまりならなかったんだよね。そういう心地良さは大事なのかもしれないね。
haru._勘としか言いようがないんだけどね。でも、そういうふうに人を信頼するのもありなんだなっていうのは思ったりする。すごく長く一緒に過ごしてきたとか、共有してきたわけじゃなくても。
玉置_そうだね。でもそれっていいかも。友達という言葉に広がりが出る。東京にいると、友達って縄張り意識的な言葉に聞こえるんだよね。でも「違うんだよな」ってずっと思ってたんだけど、今日喋ってて結構繋がってきた。記号的な会話の繋がりじゃないんだなというか。「うるさい」って最初に言ってたのって、記号とか文脈とかの話だと思うし、でもそうじゃなくても握手できるんだよなっていう。
haru._その感覚がすごく大事だなって思ってて。私がマガジンを作ったりするのも、読者がイベントに来てくれて、読者同士で繋がったり友達になっていくのを見て、そういうことの方がよっぽどリアリティがあって大切だなって思ってる。私が主催したイベントやマガジンが誰かのタッチポイントにはなったかもしれないけど、その後の関係性は私と全く関係のないところで広がっていくのがいいなって思う。
玉置_めっちゃわかる。俺がいなくても友達関係が回ってることが、俺の安心に直結してるんだよね。だから友達を自分の友達に紹介して、自分とよりもそこが仲良くなることがめっちゃあって。その時に「紹介したの俺じゃん!」って思わなくて。「おー!安心!」みたいな感じになる。そこで「せっかくなら3人で遊ぼうよ」ってならないし、2人が仲良くしてる以上は、俺はわざわざ会わなくてもいいかっていう気分になるんだよね。「家で本読んだりしよ」みたいな気持ちになる。これ共感できる?
haru._うん。できる。
玉置_おー。最近はそれが嬉しいって感じるから、友達はガンガン紹介するようにしてる。
haru._それで自分は家で本を読んでるんだ(笑)。
玉置_独特な安心感があるんだよね。
haru._でもわかるよ。たまに思うんだけど、周啓とTaiTanが仲良くしていることで、私に何かあっても大丈夫みたいなことを考える。私かTaiTanのどちらかが倒れたら、どちらかが周啓に連絡するんだなとか(笑)。
玉置_連帯保証人みたいになってる(笑)。でも、それ自体に結構俺は幸福を感じるタイプだな。
それでは今週も、いってらっしゃい。
2013年結成の4人組バンド。玉置周啓(Vo/Gt)、加藤成順(Gt)、竹田綾子(Ba)、柳澤豊(Dr)で構成。
*②MIZ
玉置周啓(Vo/Gt)と加藤成順(Gt)によるアコースティックユニット
*③TaiTan
ヒップホップグループDos Monosのメンバーでラッパー/トラックメイカー。
*④成順
バンドMONO NO AWAREのギター。ゲストの玉置さんとアコースティックユニットMIZも組んでいる
*⑤『奇奇怪怪』
ラッパーTaiTanと音楽家 玉置周啓とによるPodcast番組
*⑥『脳盗』
TBSラジオで放送中のTaiTanと玉置周啓による番組
*⑦『take me high(er)』
同番組パーソナリティのharu.と撮影担当のmiyaがパーソナリティを務めるPodcast番組
*⑧『火の鳥』
手塚治虫による漫画作品。永遠の命を巡り、人類の愚かさと進化を過去と未来を横断して描く。生と死、文明の循環を問うSF的名作
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Profile
玉置周啓
4人組バンドMONO NO AWARE、アコースティックユニットMIZのギターボーカル。作詞作曲をつとめながら、エッセイ等の執筆活動や漫画やイラスト等も手がける。人気Podcast『奇奇怪怪』やTBSラジオ『脳盗』のパーソナリティもつとめる。